「一年後には、本業を続けながら、毎月の売上目標を達成したい」。お客様からそう聞いたとき、すぐに商品の単価や必要な契約数を考え始めていませんか。数字は大切な情報ですが、それだけで、その人が望む働き方まで理解できたとは限りません。
理想の未来を聞くときは、達成したい数字に加え、どんな仕事をし、誰に関わり、日々をどう過ごしたいのかを確かめます。そのうえで、現在との違いと、支援する範囲を整理します。同じ金額を目指していても、本人が選びたい道は違うことがあります。
今回は、本業を続けながらコーチングを提供する方へ、お客様の理想を具体的に聞く方法をお伝えします。数字を高く設定させるためではなく、本人の希望と自分の提案をつなぐための確認です。
目標の数字は、希望の一部を表している

収入や売上の目標があると、話を進めやすく感じます。現在の数字と比べれば、差も分かります。しかし、その金額がなぜ必要か、何をして得たいかは、別に聞く必要があります。
例えば、生活費を補いたい人と、今の仕事以外にも自分が役立てる仕事を育てたい人では、同じ金額でも、選ぶ商品や働き方が変わる可能性があります。
また、売上の話なのか、経費を引いた後に残したい金額の話なのかも確認します。本人が同じ意味で使っているとは限りません。ここで細かな会計の講義を始める必要はありませんが、目標の意味が違うまま計画を作らないことです。
数字が希望のすべてだと思うと、金額を達成できそうな方法なら何でもよい、と解釈してしまう場合があります。本人は、今の仕事を続けながら特定の活動を育てたいのかもしれません。
目標の金額を聞いたら、「その状態になると、今と何が変わりますか」と一つ聞いてみてください。数字の背景を知る入口になります。
最初に、本人が使った言葉の意味を確かめる

「自由に働きたい」「安定させたい」「自分らしく仕事をしたい」。こうした言葉は、よく分かるようで、人によって指している状態が違います。
自由とは、働く場所を選べることなのか、平日の夜を空けられることなのか、仕事の内容を自分で決められることなのか。コーチが自分のイメージで補う前に、本人の意味を聞いてください。
質問の例は、「あなたにとって、自由に働けているというのは、どんな一週間ですか」です。答えにくければ、「今の生活で変えたい予定と、そのまま残したい予定はありますか」と、具体的な場面から聞けます。
安定という言葉なら、「何が続いていれば、安定していると感じますか」と確認します。毎月同じ売上を望んでいるのか、先の予定が見えることを望んでいるのかでは、考えることが異なります。
これらは聞き方の例です。決まった質問を全部使う必要はありません。本人が話した言葉の中で、自分にはまだ意味が分からないところを、一つずつ確かめます。
仕事の内容と、仕事を続ける条件を聞く

理想の仕事を具体化する際には、まず何をしているかを聞きます。誰に、どんな場面で、どう関わっていたいのか。対話する仕事なのか、教える仕事なのか、作業を代わりに行う仕事なのかも、本人の希望を確かめます。
次に、その仕事を生活のどこに置きたいかを聞きます。本業を続けるのか、将来は働き方を変えたいのか。家族と過ごす時間や休む時間など、仕事が育っても残したいこともあります。
「理想を聞くときに条件を出したら、可能性を狭めるのでは」と感じるかもしれません。ただ、本人にとって大切な生活を聞くことは、理想を否定するためではありません。仕事の数字が増えても、その生活を失ったら望む未来ではない場合があります。
今すぐ変えられない条件と、将来は変えたい条件は分けてください。現在は週末しか活動できなくても、将来は本業の勤務形態を変えたいという希望があるかもしれません。
一方、「そのためには仕事を辞めるしかないですね」と、まだ検討していない道を決めないことです。本人が望む状態、今の条件、これから調べることを区別して残します。
仮の例:同じ売上目標でも、提案する前に聞くことは違う

ここからは考え方を示す仮の例です。実際のお客様の発言、成果、達成可能性を示す事例ではありません。
会社員として働く二人が、それぞれ「一年後に、副業で毎月三十万円の売上を目指したい」と話したとします。この数字だけを見れば、同じ商品設計を勧めたくなるかもしれません。
一人目は、本業で経験してきた後輩育成を生かし、仕事を任され始めた人の相談に関わりたいと考えています。勤務先には残る予定で、平日の夜は家族との時間に使いたい。仕事の相談は、週末にまとまった枠を設けて提供したいと話しました。
二人目は、対話そのものより、相手の商品案を一緒に整理する作業や、説明資料を作る仕事を増やしたいと考えています。将来は本業の働き方も見直したいが、どんなサービスにするかはまだ決めていません。
一人目へ、平日の即時対応を前提にした商品を勧めたら、本人が残したい生活とずれます。二人目へ、すべて質問だけで進める面談を勧めても、提供したい関わり方と合わないかもしれません。
だから、契約数の計算へ進む前に、仕事の中身と条件を聞きます。金額の目標は残しながら、今の提供能力、使える時間、相手の需要を確かめる必要があります。
この例で、どちらかの希望が正しいと言っているわけではありません。同じ数字から、同じ理想を推定しないということです。数字が具体的でも、商品の内容はまだ決まっていない場合があります。
コーチが思う「よい未来」を、本人の答えに混ぜない

話を聞いていると、「この人なら、もっと高い売上を目指せる」「対話だけでなくコンサルティングもした方がよい」と、提案が思い浮かぶことがあります。
提案自体が悪いわけではありません。ただ、その方法を本人が望んでいるかは別です。コーチにとって合理的な方法でも、本人が大切にしたい仕事の内容や生活と合わない場合があります。
まず、相手の希望を短く返します。「本業を続け、平日の夜を確保しながら、週末に相談の仕事を育てたいのですね」といった形です。その後、「違うところや、足りないことはありますか」と確認します。
別の方法を提案するなら、その理由と変わる条件も伝えます。「この方法なら何が考えやすくなり、その代わりにどんな仕事や準備が増えるか」を説明したうえで、本人の意向を聞いてください。
提案を選ばなかったことを、稼ぐ気がない、素直ではないと評価しないことです。何が合わなかったかが分かれば、別の方法を考える材料になります。
また、返信が止まったことだけで、本人の理想や意欲を判断することもできません。やり取りがない段階で、こちらの解釈を本人の意思として確定させないようにします。
理想を聞いた後は、現在との違いを具体的にする

未来のイメージを話してもらったら、今との違いを確認します。ここで、いきなり「自信が足りないから」と原因を決める必要はありません。
例えば、週末に個別相談を提供したいのに、現状では、対象とする相手が決まっていないのか、提供内容が説明できないのか、案内先がないのか。それぞれ、確認する場所が違います。
「目指す状態に向けて、今は何ができていますか」「まだ確かめていないことは何ですか」と聞きます。足りないものだけでなく、すでに使える経験や準備も整理してください。
本人が「集客が問題です」と言っても、その言葉だけで広告の提案へ進まないことです。そもそも何を案内しているか、誰へ届いているか、何を見て集客が問題だと考えたかを確認します。
ただし、話を深めれば必ず別の原因が見つかる、ということでもありません。実際に接点が少ない場合もあります。最初の自己判断を否定するためではなく、判断の根拠を一緒に見るために聞くのです。
現状と未来の違いが分かると、次に調べること、本人が選ぶこと、支援が必要なことを分けられます。すべてを一度に解決する商品へ膨らませず、どこから扱うかを相談します。
支援することと、結果の約束を分けて説明する

本人の理想を聞けたとしても、その状態を自分の支援だけで実現できるとは限りません。相手の判断、取り組み、周囲の事情、お客様の需要なども関わるからです。
例えば、売上を目指す支援なら、商品案を整理し、案内を作り、反応を振り返るところを一緒に進める設計が考えられます。ただし、それを提供することと、毎月一定の売上が得られると約束することは違います。
自分の商品については、何をする支援か、何を本人が取り組むか、どの条件で提供するかを説明します。相手の理想を大きく語るだけでは、実際に何を受けられるかが分かりません。
対応できない部分もあります。専門知識や具体的な作業の代行が必要なのに、その準備がなければ、質問で何とかする前提で引き受けないことです。別の方法を検討するか、自分が扱える範囲を伝えます。
理想との距離を、契約する理由として誇張する必要もありません。本人が自分で進められる部分を整理したうえで、個別に支援を受けたい部分があるかを確かめてください。
希望が変わったときは、最初の目標を守らせない

取り組む中で、本人の希望が変わることもあります。実際に提供してみて、違う相手へ関わりたいと気づいたり、生活との両立を考えて、仕事の規模を調整したくなったりする場合です。
そのときは、「最初に決めたのだから」と戻す前に、何が分かって変わったのかを聞きます。新しい経験から選び直したのか、難しかった部分をまだ整理できていないのか。理由を確かめずに、変更を成長とも逃げとも決めません。
目標を変更するなら、残すことと変えることを言葉にします。仕事の内容は同じで期間を延ばすのか、期間はそのままで扱う範囲を小さくするのか。次の判断に使える形にしてください。
変更によって契約中の支援内容も変わる場合は、どこまで対応できるかを相談します。本人が望むことが変わっただけで、すべてを追加料金なしで提供できると約束する必要はありません。
本人の希望を確かめ続けることと、支援の条件を毎回曖昧にすることは分けます。変化を聞き、提供できることを説明し、双方が理解した範囲で進めましょう。
まとめ:本人が過ごしたい日々まで聞く

理想の未来を聞くときは、目標の数字、仕事の内容、残したい生活、現在との違いを確認します。コーチの考える成功像で答えを補わず、本人の言葉の意味を確かめてください。
その後で、自分が提供できる支援と、本人が取り組むことを説明します。理想が分かったことを、達成を保証できることと混同しないようにします。
次に目標の金額を聞いたら、「そのとき、どんな仕事をし、どんな一週間を過ごしていたいですか」と尋ねてみてください。数字だけでは見えなかった希望を聞くきっかけになります。
よくある質問
理想の未来が、まだ具体的に答えられない場合は?
最近変えたいと感じた場面や、今の生活で続けたいことから聞けます。最初から将来像を完成させる必要はありません。仮の希望と未定の部分を分け、次に確かめたいことを整理します。
売上目標が現実的に見えないときは、下げさせるべきですか?
まず、目標の意味と現在の準備、使える時間を確かめます。必要な条件が分からない段階で、達成できるともできないとも断定しないことです。確認した情報をもとに、期間や方法を本人と検討します。
本人の希望が、自分の商品と合わない場合は?
扱える範囲を説明し、合う部分があるかを確認します。契約のために希望を変えさせず、合わない場合は無理に案内しない判断もあります。自分の商品が、すべての理想に対応する必要はありません。
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