前回のセッションでは、相談者が「やってみます」と言っていた。ところが次に会うと、「できませんでした」という報告だった。もっと小さな行動にすればよいのか、目標を再確認すればよいのか、迷うことはありませんか。
まず確認したいのは、前回何をするつもりで、実際にはどこまで進み、どの場面で止まったのかです。そのうえで、本人が今もその行動を選びたいかを聞き、手順、条件、必要な支援を見直します。実行しなかったという一つの結果から、意欲や性格まで判断する必要はありません。
今回は、本業を続けながらコーチングを提供する方へ、継続セッションで行動を振り返る方法をお伝えします。決めたことを守らせるだけでなく、本人が次の判断に使える情報を取り出すための進め方です。
「できませんでした」を、そのまま一つの出来事にしない

同じ「できなかった」でも、中身は違います。着手する時間がなかった人、資料を開いたが何を書けばよいか分からなかった人、途中まで進めたが相手の返答を待っている人がいるかもしれません。
本人が完成していないことを基準に話していると、途中の作業まで全部なかったことになる場合があります。まず、「やろうとしたことや、少しでも進んだところはありますか」と確認してください。
ただし、無理に良かった点を見つけて励ますことが目的ではありません。何が起きたかを具体的にするためです。まだ着手していなければ、そのことを前提に、予定した場面を聞きます。
「なぜできなかったのですか」と原因を一度に求めるより、「取り組む予定だった日は、どんな一日でしたか」「始めようとしたとき、最初に何をしましたか」と、場面から聞く方法があります。
本人が覚えていないことは、分からないまま残します。コーチがもっともらしい理由を補ってしまうと、本人の経験ではなく、その理由に合わせて次の計画を作ることになります。
前回の行動を、同じ言葉で理解していたか確認する

振り返りでは、実行する前の合意も見直します。コーチは「募集案内を一段落書く」と考えていたのに、本人は「公開できる案内ページを完成させる」と受け取っていたかもしれません。
最初に、「前回決めたことを、どんな作業として受け取っていましたか」と聞きます。メモがあれば一緒に確認しますが、書いてある言葉だけで理解が一致していたと決めないようにします。
何をするかに加え、どこまでできれば一区切りなのかも確かめてください。「商品を考える」では、候補を出すことなのか、一つに決めることなのかが曖昧です。この違いは、本人のやる気とは別の問題です。
また、提案を聞いてうなずいたことと、自分で取り組むと選んだことも分けます。本人が断りにくくて同意した可能性があるなら、「そのとき、この行動を自分でも必要だと思っていましたか」と確かめる余地があります。
私は、実行されなかった行動を振り返るとき、相談者の事情と一緒に、支援する側の説明や確認も見直すことが大切だと考えています。
止まった場面から、次に確かめることを選ぶ

状況を聞いたら、すぐに「もっと細かくしましょう」と結論づけず、何が分かれば進めそうかを考えます。手順を細かくすることが役立つ場合もありますが、それだけでは扱えない事情もあります。
何をすればよいか分からなかったなら、必要な情報や最初の作業を確認します。操作が分からないのか、判断する基準がないのかでも、必要な支援は変わります。
予定した時間がなくなったなら、実際の予定と作業量を照合します。毎晩できるつもりだったが残業が続いた、家族の用事が増えたなど、変わった条件を聞いてください。過去の予定をそのまま押しつけても、使える時間は増えません。
途中で誰かの返答が必要になったなら、自分で動かせる部分と相手次第の部分を分けます。「返信をもらう」を本人だけで達成できる作業として扱わず、連絡する、待つ、別の準備をするなどを検討します。
人に見せる段階で止まったなら、何が起こると心配しているかを聞きます。断られる不安なのか、内容の誤りを確認できていないのか。必要な確認を済ませることと、不安がなくなるまで待つことを区別します。
これらは確認の観点であり、相談者を分類する診断ではありません。複数の事情が重なることもあるので、一つの理由に早くまとめず、本人の言葉と照らし合わせてください。
今もその行動を選びたいか、聞き直す

前回決めた行動が、今も必要とは限りません。状況が変わったり、調べてみて別の方法が見つかったりすることがあります。継続するかどうかも、今回の判断に含めます。
「今の状況でも、この行動を進めたいですか」「目指していることに、どうつながりそうですか」と確認します。コーチとの約束だから、という理由だけで続けても、本人の目的との関係は分からないままです。
本人がやめたいと話したら、すぐに逃げたと評価せず、何が変わったのかを聞きます。目的は同じで方法を変えたいのか、目的そのものを考え直したいのかで、次の話が違います。
一方、難しかったからすべてやめる、という結論を急ぐ必要もありません。何を望んでいて、今の方法のどこが合わなかったのかを整理したうえで、続ける、変える、保留するという選択を考えます。
大切なのは、当初の計画を守ることだけを成功の条件にしないことです。分かった事情を使って、本人が選び直せるようにします。
仮の例:案内文を送れなかった報告を振り返る

ここからは、進め方を示す仮の例です。実際のお客様の会話や成果ではありません。
会社員として働く副業コーチが、知人へサービス案内を送ると決めていたとします。次の面談では、「何もできませんでした」と話しました。
聞いてみると、案内の下書きはできていました。ただ、知人に送る段階で、頼まれていない案内を突然送ってよいのか気になり、止まっていました。
ここで「勇気を出して送ればよい」と励ますだけでは、本人が気にしている送信の仕方を検討できません。「できなかった」という報告だけから、文章を書く力が不足しているとも言えません。
まず、案内を書く作業は進んでいたことを確認します。次に、誰へ、どんな関係の中で、何を伝えようとしていたかを聞きます。本人が今もその相手へ案内したいかも確認してください。
話した結果、以前に関心を示してくれた相手へ、詳しい案内を送ってよいか先に尋ねる方法が候補になったとします。今回は、一方的に長い募集文を送る計画から、相手の意向を確認する連絡へ変えます。
本人がその方法を選ぶなら、次は確認の文章を考え、送るタイミングを決めます。相手が案内を希望しなければ、そこで止めます。返信や契約までを、本人の作業の達成条件にはしません。
この例で明確になったのは、気合いの量ではなく、行動の中で止まった位置と、確認が足りなかったことです。次の連絡で契約が決まると保証しているわけではありません。
次の行動は「何を試して何を見るか」まで決める

次に取り組むことを選ぶ際には、作業だけでなく、その行動で何を確かめるかも共有します。「もう一度やってみる」だけでは、前回と何を変えたかが曖昧になります。
仮の例なら、確認の連絡を作って送ることが作業です。自分の案内意図を短く書けるか、送る前に気になっていた点を整理できたか、相手からどのような返答があったかが振り返る材料になります。
予定する場面も具体的にします。何曜日に、どの資料を開き、どこから始めるか。すべてを細かな予定表にする必要はありませんが、本人が開始する姿を説明できる程度には確認します。
予定が変わった場合にどうするかも考えます。別の日へ移すのか、今できる部分だけ進めるのか、先に条件を確かめるのか。できなかった分を次回までに倍にして積み上げないようにします。
そして、最後に本人の言葉で説明してもらいます。「今回、何を試すことにしますか」「始める前に確認したいことは残っていますか」。コーチの提案を復唱してもらうためではなく、理解や選択の違いを確かめるためです。
連絡を増やす前に、支援の範囲を確認する

実行されないと、次は毎日連絡した方がよいと考えるコーチもいるかもしれません。本業がある中で、約束していない確認をその場の判断で増やすと、提供を続ける負担も変わります。
まず、次回の面談まで本人が進める設計なのか、途中の報告を含む設計なのかを確認します。途中で連絡するなら、何を、いつ、どの方法で共有し、どのような返答があるかを説明します。
本人も毎日の確認を望んでいるとは限りません。連絡を増やすことを熱心さの証明にせず、今の不足に合った方法かを考えてください。
前回の説明が曖昧だったなら、資料や合意を整える方が必要かもしれません。技術や知識の不足なら、それに対応できる支援を検討します。見守る回数を増やすだけで解決しようとしないことです。
実行されなかったことを、そのまま追加契約の理由にも結びつけないようにします。何が不足し、どんな対応が考えられるかを整理してから、本人が必要な支援を判断できる情報を伝えます。
同じ報告が続くなら、自分の関わり方も振り返る

毎回同じ行動が残る場合、毎回「次こそ」と締めくくるだけでは、違いが分かりません。前回までに変えたことと、その後に起きたことを並べて確認します。
作業を小さくしたのに進まなかったなら、今度は時間の条件や目的とのつながりを確かめる必要があるかもしれません。すでに確認したことを忘れて、同じ助言を繰り返していないかを見てください。
自分の関わり方では、提案を急いでいなかったか、本人が断れる形で聞いたか、何を理解したかを確かめたかを振り返ります。相手の課題だけに原因を置くと、説明を変える余地を見落とします。
自分の対応範囲では扱いきれない事情が見えたなら、その範囲を伝え、進め方を相談します。どんな場合もコーチングだけで解決できると引き受け続ける必要はありません。
振り返りの記録には、本人が話したことと自分の解釈を分けて残します。「平日は残業が続いた」という報告を、「優先順位が低かった」と勝手に書き換えないことです。次の面談で確かめる問いを残してください。
まとめ:実行の有無から、次に使える情報を取り出す

決めた行動が実行されなかったときは、何をするつもりだったか、どこまで進んだか、どの場面で止まったかを確認します。本人が今も選びたい行動かを聞き、必要な情報や条件を整え、次に試すことへつなげます。
相談者が行動することは大切です。同時に、支援する側も、何をどう確認し、どんな前提で行動を提案したかを見直せます。「やる気がない」と評価して終えるより、次の判断を変えられる材料を探しましょう。
次に「できませんでした」と聞いたら、「少しでも取り組んだところや、始めようとした場面を教えてください」と、一つ具体的に聞いてみてください。
よくある質問
行動を決めることを、毎回の必須条件にすべきですか?
その回の目的と本人の状況によります。判断に必要な情報や気持ちを整理することが先の場合もあります。次の行動を決めるなら、目的とのつながりと本人の意思を確認します。行動を一つ書くことだけで、セッションの価値を判断しないでください。
一部だけ実行していた場合は、完了と扱ってよいですか?
当初の完了条件と、実際に進んだことを分けて確認します。完了していないことを隠す必要も、途中の進捗を無視する必要もありません。進んだ部分から何が分かり、残りをどう扱うかを相談します。
行動しない理由を、こちらから仮説として伝えてもよいですか?
本人の話を聞いたうえで、仮説と分かる形で確認する方法があります。「こういう可能性はありますか」と尋ね、違うと言われたら修正します。無意識の問題だと断定し、本人の説明を受け付けない形にはしないことです。
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