学んだコーチングを使って商品を作りたい。でも、どんな支援なら求められるのか分からない。知人に案を話すと「いいと思う」と言ってもらえるのに、募集すると申し込みがない。そんなとき、集客方法を変える前に、商品の作り方を振り返ってみてください。
お客様のニーズを確かめるヒアリングでは、欲しいサービスを尋ねるだけでなく、実際に困った場面、すでに試したこと、まだ解決していないことを聞きます。その話と、自分が提供できる支援を照らし合わせて、商品案を考えます。
大切なのは、自分の商品が正しいと証明してもらうことではありません。想像していた悩みと、本人が実際に困っていることの違いを知ることです。今回は、本業を続けながらコーチングを仕事として育てたい方へ、商品づくりの前に話を聞く方法をお伝えします。
「こんな商品があったら欲しいですか」だけでは分からない

商品案を考えると、早く反応を知りたくなります。「自分らしく働けるようになるコーチングがあったら、受けたいですか」と聞けば、前向きな返事が来るかもしれません。
ただ、その返事だけでは、実際の生活の中で何を変えたいのか、今どのくらい困っているのか、時間やお金を使って取り組むかまでは分かりません。案を応援してくれたことと、申し込む判断は別です。
先に商品の良さを詳しく話すと、相手もその説明に沿って答えようとする場合があります。こちらはニーズを聞いているつもりでも、自分の考えに賛成してもらう時間になってしまうのです。
そこで、商品案を説明する前に、相手が経験したことを聞きます。「最近、働き方について迷ったのは、どんな場面でしたか」という問いなら、相手の状況から話を始められます。
答えが商品案と違っても、その場で修正してもらう必要はありません。違いが分かったこと自体が、話を聞いた意味になります。こちらに都合のよい答えだけを拾わないようにしてください。
話を聞く相手は、学んだ仲間だけにしない

コーチングを学んだ仲間は、技術や進め方を相談する相手になります。一方で、コーチングを知らないお客様が、何に困り、どんな言葉で相談先を探すかとは、見方が違うことがあります。
例えば、仲間には通じる「自己基盤」「価値観の明確化」という言葉も、相談する本人は使っていないかもしれません。「休日も仕事の連絡が気になる」「異動の希望を出すか決められない」といった場面で話すこともあるでしょう。
商品づくりのためなら、想定している対象に近い状況を経験した人へ、協力をお願いすることを考えます。「誰でもいいから人数を集める」より、何を知りたいのかに合った相手を考えてください。
知人にお願いする場合も、知り合いだから対象に合うとは限りません。また、応援する気持ちで好意的に答えてくれる可能性もあります。関係性を踏まえたうえで、話を判断材料にします。
相手を見つけるために、断られた人へ繰り返し依頼する必要はありません。協力しない選択を尊重し、引き受けてくれた場合も、答えたくないことには答えなくてよいと伝えます。
最初に、話を聞く目的と使い方を伝える

「少し話を聞かせてください」だけでは、相談に乗ってもらえると思う人もいれば、商品を勧められるのかと構える人もいます。始める前に、今回の目的を説明してください。
例えば、「働き方を考える支援を作るために、実際にどんな場面で迷うかを知りたい」と伝えます。所要時間の目安、聞く内容、メモの扱いも事前に知らせます。
調査として依頼するなら、その場で契約へ誘導することを隠さないようにします。話を聞くことと営業の案内は区別し、別途案内したい場合も、本人の希望を確かめます。
録音がなくても聞き取りはできます。録音するなら先に了承を得て、何に使い、どのように保管するかを説明します。仕事や家庭の具体的な事情が含まれる場合は、必要以上の細部を集めないことです。
調査への協力を得たことと、話をブログや広告に掲載してよいことは同じではありません。商品を考えるために聞いた内容を、そのまま「お客様の声」に変えないでください。
聞きたいのは、悩みの名前より「起きたこと」

ヒアリングでは、次の順番を目安にできます。決まった台本を読み上げるのではなく、相手の話に応じて必要なところを確かめます。
最初は、困った場面です。「最近、そのことで迷ったときのことを、話せる範囲で教えてください」と聞きます。いつ、どんな状況で、何を決められなかったのかが分かると、漠然とした悩みが具体的になります。
次は、そのときの対応です。「そのとき、どうしましたか」「何か調べたり、誰かに相談したりしましたか」と聞きます。本人がすでにしていることを知らずに、新しい支援だけを考えないためです。
続いて、試した結果を確かめます。「役に立ったことは何でしたか」「それでも残ったことはありますか」。不満だけでなく、すでに解決できた部分も聞きます。今の方法で十分なら、無理に不足を探す必要はありません。
その後に、望む状態を聞きます。「その場面がどうなれば、今よりよいと思いますか」。本人の希望と、こちらが望ましいと思う状態を混ぜないようにします。
最後に、取り組む際の条件を確かめます。「今、取り組むうえで難しいことはありますか」。時間、周囲との調整、支援の受け方など、話された内容をもとに必要な点だけ確認します。
質問をすべて消化することが目的ではありません。大切な話が出たら、そちらを丁寧に聞きます。本人の言葉で分からない点は、その場で意味を確かめてください。
「それはマインドの問題ですね」と、途中で結論を出さない

コーチングを学んでいると、話を聞きながら原因や解決策が思い浮かぶことがあります。それ自体が悪いわけではありませんが、ヒアリングの途中で答えを決めると、聞けなくなる部分があります。
例えば、相手が「行動できない」と言ったとき、「自信がないからですね」と返すと、本人はその説明に合わせて話し始めるかもしれません。実際には、判断に必要な情報がない、予定が合わない、今は優先していないなど、別の理由も考えられます。
まずは「行動できないというのは、具体的に何をしようとして止まったのですか」と確認します。原因の解釈は後に置き、起きたことと本人の説明を聞く順番です。
本人が「自信がないから」と説明した場合も、それだけで確定させず、何ができると進めそうか、過去に進めたときはどうだったかを確かめられます。ただし、調査を深い個別支援へ勝手に変えないよう、合意した範囲を守ります。
自分の得意な方法で解決できる悩みへ、話を誘導しないことです。得意な方法が合わないという情報も、商品を考えるうえでは必要です。
仮の例:「自信をつけたい」の奥にある具体的な困りごと

ここからは聞き方を示す仮の例です。実在の相談者の発言や、受講者の成果ではありません。
本業を続けるコーチが、職場で意見を言いにくい人へ「自信をつけるコーチング」を考えていたとします。話を聞いた相手も、最初は「もっと自信があれば」と答えました。
そこで、最近困った場面を聞くと、会議で発言すること全般ではなく、他部署へ依頼するときに何を整理すればよいか分からず、説明が長くなるという話が出てきました。
本人はすでに、話し方の本を読んでいました。短く話すことは意識できたものの、依頼の目的と相手に決めてほしいことを整理できていない、という点が残っていたとします。
この場合、すぐに「自信が問題ではない」と言い切る必要はありません。ただ、商品を考える材料としては、本人が依頼の前に何を整理すると役立ちそうか、という具体的な問いが生まれます。
コーチ側がその整理を支援できるなら、支援案の候補になります。扱えないなら、学習や別の専門家の支援が必要かを考えます。聞いた悩みを、何でも自分の商品に取り込むわけではありません。
一人の話で、同じ立場の人全員に当てはまるとも言えません。次に別の協力者へ話を聞くときは、似た場面があるか、別の困り方をしているかを確かめます。
聞いた言葉と、自分の解釈を分けて残す

話を聞いた後、メモを「自信がない人だった」の一言でまとめてしまうと、せっかく聞いた具体的な情報が消えてしまいます。
記録は、「本人が話したこと」「そこから自分が考えたこと」「まだ確かめていないこと」に分けます。例えば、本人が話したのは会議での出来事で、自己肯定感が原因という部分は自分の解釈かもしれません。
正確に書き取れなかった言葉を、そのままの発言として引用しないことも大切です。要約した箇所は要約だと分かるようにします。名前や勤務先など、商品づくりに不要な情報を記録へ増やす必要はありません。
複数の話を並べるときは、共通点だけでなく違いも残します。同じ悩みの言葉でも、起きた場面や試した方法が違えば、必要な支援も異なる可能性があります。
気に入った一言だけでキャッチコピーを作る前に、その言葉がどんな状況で出てきたのかを見直してください。強い表現だけ切り取ると、相手が伝えたかったことから離れてしまいます。
要望を全部足すのではなく、一つの商品案に絞る

話を聞くほど、面談、教材、毎日の連絡、作業の代行など、いろいろな要望が出るかもしれません。すべてを入れればよい商品になるとは限りません。
まず、支援したい状況と、今の自分が責任を持って提供できることが重なる部分を探します。そのうえで、本業と両立できる時間や体制を確かめます。必要と言われたことでも、無理な条件で引き受けないことです。
商品案には、「どんな場面の人へ」「何を整理・実行する支援か」「どのように提供するか」を書きます。聞いた情報から言えることと、まだ仮説の部分を分けてください。
そして、内容や料金を示して検討してもらう段階へ進みます。ヒアリングで好意的な反応があったことは、購入が確認できたことではありません。実際に提供した後の振り返りも、別に必要です。
調べ続けて何も案内しない状態にならないよう、次に何を判断するための調査かも決めます。「分からないから聞く」を、「この点を確認したら、案を出すか見直すか決める」へ変えていきます。
まとめ:商品を語る前に、相手の経験を聞く

ニーズの確認では、欲しいサービスの名前より、実際に起きたこと、すでに試したこと、残っている困りごとを聞きます。そこから、自分が提供できる支援との接点を考えます。
私は、リサーチを、自分の商品に賛成してくれる人を探す作業にはしたくありません。想定と違う話も受け取り、商品や対象を見直すための時間だと考えています。
次に誰かへ話を聞くときは、商品説明を始める前に、「最近、そのことで困った場面を教えてください」と尋ねてみてください。答えを急がず、その人が何を経験しているのかを知ることから始めましょう。
よくある質問
ヒアリングは何人にすれば十分ですか?
一律の人数では決められません。どの状況を対象にするか、何を確認したいかによって変わります。まず協力を得られる範囲で聞き、共通点と違い、未確認の点を整理します。少人数の回答を市場全体の割合として扱わず、次に確かめることを絞ってください。
話を聞ける人がいない場合は、どう始めればよいですか?
公開されている質問や書籍などから、想定する読者の困りごとの候補を整理する方法があります。ただし、それは自分の見込み客への確認とは別です。他人の投稿を無断で事例化せず、仮説として残し、協力者に聞ける機会ができたら確かめます。
相手から「それなら相談したい」と言われたら、案内してよいですか?
本人の希望を確認し、調査とは別に、提供内容や料金を説明する時間を設けられます。話を聞かせてもらったことを購入の約束と考えず、条件を確認してから申し込むか判断できる形にしてください。
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