コーチングの高額商品が売れない本当の理由

コーチングの高額商品が売れない原因の大半は、商品の中身でもトークスキルでもありません。私が見てきた限り、原因は2つに集約されます。「自分の価格への自信のなさ」と「余計なひと言」です。この2つはセールスの技術を学んでも直りません。この記事では、なぜこの2つが契約を壊すのか、そしてクロージングの本質が「売り込み」ではなく「相手の理想の未来に責任を持つ覚悟の提示」であることについて、私自身の失敗と実体験からお伝えします。

目次

高額商品が売れない原因は、2つに集約される

絡まった糸が2本の太い糸にまとまるピクトグラム

高額商品が売れないと相談に来る方は、たいてい同じことを言います。「商品が悪いのでしょうか」「セールストークを学んだほうがいいのでしょうか」。気持ちはよく分かります。私も稼げなかった頃、同じことを考えていました。

でも、違うのです。私はビジネスコーチとして、個別相談800人超・セッション6,000時間超の記録を見てきました。その中で、高額商品が売れない人に共通していたのは、商品の質の低さでも、話し方の下手さでもありません。次の2つでした。

  • 原因① 自分の価格への自信のなさ(価格を言う瞬間の迷いが、相手に伝わってしまう)
  • 原因② 余計なひと言(聞かれていない説明・値引きの先回り・「高いですよね」という自爆)

逆に言えば、商品を作り直す必要も、話術を磨く必要もない場合がほとんどです。直すべき場所は、たった2つ。しかもどちらも、技術ではなくマインドの問題です。

前号のなぜ、真面目なコーチほど稼げないのかで、稼げない原因は能力ではなく「構造」にあるという話を書きました。その中で、価格は覚悟の表明だ、という構造にも触れています。今回はその続編として、構造の話をセールスの現場、つまり価格を口にするその瞬間まで降ろしていきます。

原因① 自分の価格への自信のなさは、相手に伝染する

音叉の振動が隣の音叉に伝わるピクトグラム

まず、1つ目の原因からです。ここで、大事な定義をひとつ書いておきます。

価格への自信とは、その金額をもらうことで、相手の理想の未来にどこまで責任を持てるかという、自分自身への確信のことです。話し方の堂々さではありません。心の中の確信です。

そして、この確信の有無は、隠せません。価格を伝える瞬間、確信のない人は必ず揺れます。声が少し小さくなる。目が泳ぐ。言い終わる前に相手の顔色をうかがう。金額のあとに、聞かれてもいない言葉を足してしまう。本人は隠しているつもりでも、相手には全部伝わっています。

考えてみてください。目の前のコーチが、自分の商品の価格を言いながら迷っている。そのとき、お客様の頭に浮かぶのは、こういう問いです。「この人自身が自分の商品に確信を持てていないのに、私はこの人に未来を任せていいのだろうか」。商品の中身を検討する前に、この問いで契約は消えます。金額が高いから断られるのではありません。金額を言う人が揺れているから、断られるのです。

私自身、安く売っていた頃はまさにこれでした。当時の私は、セッションの腕には自信がありました。それでも、価格の話になると声が小さくなりました。「この金額をもらうほどの結果を出せなかったら、どうしよう」という迷いがあったからです。いま振り返ると、あの迷いはお客様への誠実さではなく、自分が傷つかないための保険でした。そして、その保険が相手に伝染して、お客様の「やってみたい」という気持ちまで揺らしていたのです。

面白いもので、同じ商品・同じ価格でも、伝える側の確信が変わるだけで、お客様の反応は変わります。私は価格を上げた後のほうが、むしろ契約が決まるようになりました。商品が急に良くなったわけではありません。「この金額の分だけ、この人の未来に責任を持つ」と自分の中で決まったことで、価格を伝える瞬間の迷いが消えたのです。迷いが消えると、お客様は価格ではなく、自分の未来の話をし始めます。これが、確信が伝染するということの、もうひとつの面です。不安が伝染するように、覚悟もまた伝染するのです。

自信のなさは、性格の問題ではありません。自分の商品と価格に対する「決め」がまだ済んでいない、という準備の問題です。だから、直せます。このことは、後半でもう一度書きます。

原因② 「余計なひと言」が契約を壊す

積み木の塔が最後の1個で崩れるピクトグラム

2つ目の原因は、もっと具体的です。契約は、長いセールストークの巧拙で決まるのではなく、たったひと言で壊れます。それも、言わなくてもよかったひと言で、です。

個別相談の記録を振り返ると、惜しいところまで行って契約にならないケースには、パターンがあります。代表的な3つを表にまとめます。

余計なひと言 言ってしまう心理 相手に伝わってしまうメッセージ
聞かれていない説明(カリキュラムや特典を延々と話す) 沈黙が怖い・中身で納得させたい 「中身を盛らないと選ばれない商品なのだ」
値引きの先回り(「分割もできます」「初回は安くします」を相手が言う前に出す) 断られる前に逃げ道を作りたい 「この価格は、実は本人も高すぎると思っている」
「高いですよね」という自爆(相手が何も言っていないのに自分から言う) 先に言えば傷つかない気がする 「価値より価格が上回っている、と本人が認めている」

3つとも、根っこは同じです。断られるのが怖いから、先回りして自分を守っている。でも、その守りの言葉はすべて、お客様には「この商品は価格に見合わない」という証言として届きます。売っている本人が、自分の商品の一番の否定者になってしまうのです。

あるクライアントは、体験セッションの終盤までとてもいい流れを作れるのに、価格を伝えた直後に必ず説明を足してしまう癖がありました。相手は何も聞いていないのに、です。ご本人は「丁寧に説明している」つもりでした。でも、やっていたのは説明ではなく、沈黙から逃げることでした。価格を伝えたあとの沈黙は、お客様が自分の未来を考えている時間です。そこに言葉をかぶせるのは、相手の意思決定を邪魔する行為なのです。

余計なひと言をやめる方法は、シンプルです。価格を伝えたら、黙る。沈黙は、相手への信頼の表明です。「あなたは自分で決められる人だ」と態度で伝えることでもあります。技術としてはこれだけですが、これができるかどうかは、結局のところ原因①、つまり自分の価格に確信があるかどうかで決まります。

クロージングの本質は、覚悟の提示である

案内人がロープを自分の腰にも結ぶピクトグラム

では、自信のなさはどうすれば消えるのか。ここが、この記事の中心です。

クロージングとは、売り込みではなく、相手の理想の未来に責任を持つという覚悟そのものを価格という形で提示する行為です。この定義に立てるかどうかで、セールスはまったく別のものになります。

売り込みだと思っているうちは、セールスは「お金をもらうために相手を説得する時間」です。だから、罪悪感が出ます。迷いが出ます。余計なひと言が出ます。一方、覚悟の提示だと分かると、セールスは「あなたの理想の未来に、私はここまで責任を持ちます。そのための条件がこの価格です」と伝える時間に変わります。主役は自分の売上ではなく、相手の未来です。ここには、隠すべきものが何もありません。

私の体験セッションでは、商品の説明より先に、お客様自身に理想の未来を語ってもらいます。「1年後、どうなっていたら理想ですか」。こちらから未来を提案するのではなく、お客様の口から語ってもらう。人は、自分の言葉で語った未来にしかリアリティを持てないからです。そのうえで、その未来に私がどこまで責任を持つかを話し、最後に価格を伝えます。価格は、その責任の重さの表明として出てくるので、迷う理由がないのです。

忘れられない場面があります。創業期、年間100万円の契約を初めていただいたときのことです。私は体験セッションの途中で「どう説得しようか」と考えていました。ところが、お客様のほうから「早く本契約したいので、契約書を出してください」と言われたのです。拍子抜けしました。セールストークで決まったのではありません。そこに至るまでに渡していた情報と、理想の未来の話で、お客様の心はすでに決まっていたのです。このとき学びました。クロージングは説得の技術ではなく、それまでに積み上げた信頼と覚悟の、最後の確認作業なのだと。

売り方の組み立てについては、一番簡単な高額商品を売る方法でも詳しく書いています。

そもそも「買う気のない人」に売ろうとしていないか

漏斗の入口のふるいで選別されるピクトグラム

最後に、前提の話をします。ここまでの話がすべて正しくても、売れないケースがひとつだけあります。そもそも、買う気のない人に売ろうとしている場合です。

買う気のない人とは、ひやかしの人という意味ではありません。今はまだ、自分の未来にお金を投じる決意ができていない人、という意味です。その方が悪いのではありません。タイミングが違うだけです。ただ、その方にどれだけ覚悟を提示しても、契約にはなりません。セールスの問題ではなく、入口の問題だからです。

体験セッションの場で「とりあえず話だけ聞きに来ました」という方に全力でクロージングをかけて、断られて、「自分はセールスが下手だ」と落ち込む。これは、順番の取り違えです。セールスの手前には、集客と選別があります。誰に体験セッションへ来てもらうかの設計がずれていると、セールスの技術ではもう取り返せません。むしろ、買う気のない人への熱心なセールスは、相手にとってもあなたにとっても、つらい時間にしかなりません。

私も昔は、来てくれた人全員と契約しようとしていました。断られるたびに自分のトークを責めて、ますます自信を失う。いま思えば、あれはセールスの失敗ではなく、入口の設計の失敗でした。この論点は興味がない人にまでクロージングしないという記事でも書いていますが、クロージングは「決めに来た人」との最後の確認であって、「迷いに来た人」を口説く技術ではないのです。

まとめます。高額商品が売れない原因は、商品でもトークでもありません。第一に、自分の価格への自信のなさ。第二に、そこから生まれる余計なひと言。そして前提として、入口の設計。この3点を見直すだけで、セールスの景色は変わります。トークの台本を増やす前に、まず自分に問いかけてみてください。「私はこの価格で、相手の未来にどこまで責任を持つと決めているか」。その答えが定まったとき、余計なひと言は自然に消えていきます。

よくある質問

セールストークの台本を覚えれば、高額商品は売れるようになりますか?

台本だけでは難しい、というのが私の経験からの答えです。台本が整っていても、価格を言う瞬間の迷いは隠せません。お客様が見ているのは言葉の流暢さではなく、「この人は私の未来に責任を持つ覚悟があるか」です。台本を増やす前に、自分の価格への確信を先に固めることをおすすめします。

価格に自信が持てません。自信がつくまで安くしておくべきですか?

順番が逆になりやすいので注意が必要です。安くしている限り、覚悟を試される場面が来ないため、価格への自信は育ちません。先に「この金額で相手の未来にここまで責任を持つ」と自分で決め、その責任を果たす経験を重ねることで、自信は後からついてきます。自信は値下げからではなく、覚悟から生まれます。

価格を伝えたあとの沈黙が怖いです。どうすればいいですか?

沈黙は、お客様が自分の未来を真剣に考えている時間だと捉え直してください。そこに説明をかぶせるのは、相手の意思決定を邪魔する行為です。価格を伝えたら、黙って待つ。それは冷たさではなく、「あなたは自分で決められる人だ」という信頼の表明です。怖さが消えないなら、それは沈黙の問題ではなく、自分の価格への確信がまだ固まっていないサインです。

断られ続けて、セールスが怖くなりました。トークを直すべきでしょうか?

トークより先に、誰に売ろうとしているかを見直すことをおすすめします。まだ買う決意のない方に売ろうとしていた場合、どんなトークでも契約にはならず、断られる経験だけが積み上がります。それはセールスの失敗ではなく、入口(集客・選別)の設計の問題です。体験セッションに「決めに来た人」が来る流れを作れているか、セールスの手前を先に確認してください。

この記事の内容を、あなたのビジネスに当てはめて実践したい方へ。メールで課題を出し、私が直接添削する無料講座をやっています。読むだけの講座ではないので、本気の方だけどうぞ。
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この記事を書いた人

株式会社マインドコーチ 代表取締役 安達慎一

集客やセールスが苦手な稼げないコーチの方向けに、コーチングビジネスの基本を教えています。起業家を育成しています。

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