コーチングを本業にする人が、最初にやるべきたったひとつのこと

コーチングを本業にすると決めた人が最初にやるべきことは、集客の勉強でも、資格やスキルの追加でもありません。本命商品をひとつ決めることです。商品が決まっていない段階での集客も学びも、目的地のない努力になって流れていきます。逆に、商品さえ決まれば、覚悟もポジションも見込み客との接点も、すべて商品から逆算して決まっていきます。この記事では、なぜ商品が起点なのか、そして最初のひとつをどう決めればいいのかを、私自身の実体験と個別相談の記録からお伝えします。

目次

「本業にする」とは、商品で食べていくと決めること

本棚の本が店先の陳列台に商品として並ぶ図——学びを商品に切り替えるイメージ

まず、言葉の意味をそろえるところから始めます。「コーチングを本業にしたい」と言うとき、多くの方はぼんやりと「コーチングだけで生活できるようになりたい」という状態を思い浮かべています。間違いではないのですが、この描き方のままだと、次の一歩が決まりません。生活できるようになる、は状態であって、行動ではないからです。

コーチングを本業にするとは、コーチングを「学ぶ対象」から「生活を支える商品」へ切り替えると決めることです。これがこの記事の土台になる定義です。

学びの段階のコーチングと、本業のコーチングは、同じ技術を使っていても、まったく別のものです。学びの段階では、問いは「次に何を学ぶか」です。ところが本業にすると決めた瞬間、問いはこう変わります。「私は、何を、誰に、いくらで売るのか」。この問いに答えられる形になっているコーチングだけが、商品と呼べます。逆に言えば、どれだけセッションが上手でも、この問いに答えられないうちは、まだ商品を持っていないのです。

私はビジネスコーチとして、個別相談800人超・セッション6,000時間超の記録を見てきました。その中で、本業化がうまく進まない方に共通していたのは、能力の低さではありません。売る商品がまだ決まっていないことでした。何年も学び、資格をいくつも持っているのに、「何を売るのですか」と聞くと答えに詰まる。この状態のまま集客やSNSを頑張っている方が、本当に多いのです。真面目な人ほど学びを重ねる方向に努力してしまう構造については、なぜ、真面目なコーチほど稼げないのかで詳しく書きましたので、ここでは繰り返しません。今回お伝えしたいのは、その先です。では、決めた人は、何から手を付けるべきなのか。

最初の一手は「本命商品をひとつ決めること」——4つの起点候補

4方向の道標のうち1枚だけが太く強調された図——4つの起点候補から本命商品を選ぶ

本業にすると決めた人が最初に置くべき起点の候補は、突き詰めると4つです。覚悟、ポジション、商品、そして見込み客との接点。どれも大事なもので、どれを最初に置くべきかは、人によって言うことが違います。覚悟がすべてだと言う人もいれば、まずポジショニングだと言う人も、とにかくSNSで接点を作れと言う人もいます。

私の答えは、商品です。それも、本業の売上の柱になる本命商品を、ひとつだけ決めること。これが最初の一手です。理由は単純で、残りの3つは商品が決まって初めて中身を持つからです。4つを並べて比べてみます。

起点の候補 それを最初に置くと、何が起きるか
覚悟から始める 気持ちには形がないので、日々の忙しさの中で薄れていく。「本気でやる」と決意した経験が何度もあるのに変わっていないなら、それが証拠
ポジションから始める 売る商品がないままの肩書きは、名乗りだけで終わる。プロフィールは立派になるが、売上の入り口がどこにもない
接点(集客)から始める 見込み客が来てくれても、案内する先がない。受け皿のない集客は、努力がそのまま流れていく
商品から始める 覚悟が「決めごと」という形になり、ポジションが商品から定まり、集客に目的地ができる

誤解しないでいただきたいのですが、覚悟が要らないと言っているのではありません。順番の話をしています。覚悟は、胸の中で温めていても固まりません。何かを決めて、あとに引けない形にしたときに、初めて固まるものです。そして、コーチングの本業化において「あとに引けない決めごと」の役割を果たすのが、本命商品なのです。

商品が決まると、覚悟・ポジション・集客が後から決まる

中心の歯車が回ると周囲の歯車が連動して回る図——商品が決まると覚悟・ポジション・集客が動き出す

商品を起点に置くと何が起きるのか、3つの側面から見ていきます。

ひとつ目は、覚悟です。本命商品を決めるという作業には、避けて通れない工程が含まれています。価格を付けることです。この商品にいくらの値を付け、その金額の分だけお客様の未来に責任を持つ。そう決めた瞬間、覚悟は気持ちの問題ではなく、決めごとになります。気持ちは揺れますが、決めごとは揺れません。「本気でやるぞ」と何度も思い直すより、価格の付いた商品をひとつ持つほうが、覚悟としてはるかに強いのです。

ふたつ目は、ポジションです。ポジションとは、突き詰めれば「誰を、どんな未来に連れて行く専門家なのか」という一文です。ところがこの一文は、机の上でポジショニングを考えていても出てきません。本命商品を決める作業、つまり「この商品で、この人を、ここまで連れて行く」と具体的に決める作業をすると、その一文は商品の定義として自動的に出てきます。ポジションは考えるものではなく、商品を決めた結果として定まるものなのです。

みっつ目は、見込み客との接点、つまり集客です。商品が決まると、その商品を必要とする人の顔が具体的になります。顔が具体的になると、その人がどこにいて、どんな言葉を検索し、何に悩んでいる夜にスマホを開くのかが見えてきます。発信の内容も、選ぶ媒体も、全部そこから逆算できます。商品のない集客が「誰にでも届くように」と薄く広くなっていくのに対し、商品から逆算した集客は、たった一人に向かって深く刺さっていきます。

私自身、借金を抱えて事業を立て直したとき、最初に手を付けたのは集客ではありませんでした。メンターの指導のもとで、まず本命商品を決めたのです。商品が決まってから、その商品に合う集客の仕組みを作りました。順番がこの逆だった時代、つまり商品があいまいなまま集客と学びを頑張っていた時代は、何年やっても月商20〜30万円から動きませんでした。同じ私が、同じ技術で、順番を変えただけで結果が変わった。だからこの順番の話を、私は理屈ではなく体験として書いています。

「準備が整ってから決める」は、順番が逆

スタートライン手前で荷物を積み上げる人と、線の上で前を向く人の対比図——準備の先送りと決めてから走る人の違い

ここまで読んで、こう感じた方がいると思います。「商品を決めるのが大事なのは分かった。でも、自分にはまだ早い。もう少し準備が整ってから決めたい」。この感覚こそ、本業化を止めている正体です。

本業にする前の段階で、多くの方がやっている準備は、たとえばこういうものです。

  • 資格やスキルをもうひとつ追加する(自信がついてから決めたい)
  • SNSのフォロワーや読者を増やす(見てくれる人が増えてから決めたい)
  • プロフィールや肩書きを磨く(ちゃんとして見えるようになってから決めたい)
  • 低額や無料のセッション経験を積む(実績が貯まってから決めたい)

どれも、それ自体が悪いわけではありません。問題は、これらがすべて「決める」を先送りするための準備になっていることです。そして残念ながら、この準備には終わりが来ません。資格が増えれば、次に足りないものが見えます。フォロワーが増えても、「まだこの数では」と感じます。準備が整ったと感じられる日は、待っていても来ないのです。

順番は逆です。準備が整うから決められるのではなく、決めるから、何を準備すべきかが分かるのです。本命商品を決めると、その商品を提供するために本当に必要な学びと、必要のない学びが、はっきり分かれます。決める前の学びが「不安を埋めるための学び」だったのに対し、決めた後の学びは「商品を磨くための学び」に変わります。同じ勉強でも、効き方がまったく違います。スタートラインの位置を間違えたまま走り出してしまう構造については、多くの稼げない人はそもそもスタートラインを間違えているでも書きました。また、ビジネス全般の最初の一手については、ビジネスで最初にやるべきことという記事でも、昔から同じことを言い続けています。

最初の本命商品の決め方——「1人を、1年で、どこへ連れて行くか」

人物と1年後の旗が商品の箱を通る1本の線で結ばれた図——誰を・どこへ・どうやってを1本につなげる

では、実務の話をします。最初の本命商品は、次の3つを決めれば骨組みができます。

  • 手順① 誰を——たった1人の理想のクライアント像を決める(過去の自分でも、これまで出会った中で一番力になりたかった人でも構いません)
  • 手順② どこへ——その人の1年後の理想の未来を具体的に決める(収入・時間・毎日の気持ちがどう変わっているか)
  • 手順③ どうやって——そこまで並走する期間と形を決める(単発セッションの寄せ集めではなく、未来に届くまでの継続的な関わり)

ここで大事なのは、最初の本命商品は高単価の継続契約で設計する、ということです。理由は、覚悟や気合いの話ではなく、算数です。本業にするということは、この商品で生活を支えるということです。仮に月50万円の売上が必要だとして、1回5,000円の単発セッションなら月100件。平日に毎日5件のセッションをこなし続ける計算で、集客も体力も現実的ではありません。一方、数十万円の継続契約なら、月に必要な契約は1〜2件です。個人がひとりで営む本業として成立するのは、どちらの設計か。答えは明らかだと思います。

単価を上げることに気後れを感じた方は、その気持ちの正体と価格の付け方を先に整理してください。価格を相場ではなく責任の重さから決める考え方は前号のコーチングの価格設定の考え方で、決めた価格を迷いなく伝えられるかどうかという売る場面の話はコーチングの高額商品が売れない本当の理由で、それぞれ詳しく書いています。本記事で決めた商品の骨組みは、この2本とつなげて初めて完成します。

そして、もうひとつ。最初の本命商品は、骨組みだけで決めてください。カリキュラムを何十本も作り込む必要はありません。誰を、どこへ、どうやって。この3つが言えれば、商品は売り始められます。細部は、実際のお客様と歩きながら磨いていくものです。完成してから売ろうとすると、また「準備の沼」に戻ってしまいます。

まとめます。コーチングを本業にする人が最初にやることは、本命商品をひとつ決めることです。商品が決まると、覚悟は決めごとになり、ポジションは商品の定義から定まり、集客には目的地ができます。準備が整ってから決めるのではなく、決めるから準備すべきものが分かる。もし今、本業にすると心に決めながら、資格や集客の情報を集め続けているなら、いったん手を止めて、紙に3行だけ書いてみてください。誰を、どこへ、どうやって。その3行が、あなたの本業の起点になります。

よくある質問

まだ副業の段階ですが、本命商品を決めるのは早すぎませんか?

早すぎることはありません。むしろ副業の段階でこそ、本命商品を先に決めることをおすすめします。商品が決まっていれば、副業の限られた時間を「商品につながる活動」だけに絞れるからです。本業にしてから決めようとすると、収入が途切れた焦りの中で商品を決めることになり、判断が苦しくなります。生活が守られているうちに、商品という骨組みを先に作っておくのが、一番安全な順番です。

資格をもうひとつ取ってから商品を決めたほうがよくないですか?

順番を逆にすることをおすすめします。商品が決まっていない段階の資格取得は、「何のためにその資格が要るのか」の答えがないまま時間とお金を使うことになります。先に商品を決めると、その商品の提供に本当に必要な学びが何かが逆算で分かるので、同じ資格でも投資としての効き方が変わります。なお、お客様は資格の数ではなく「自分を理想の未来に連れて行ってくれるか」を見ています。資格が契約の決め手になることは、ほとんどありません。

フォロワーや読者を増やしてから商品を作るべきではないですか?

商品が先です。商品のないまま増やしたフォロワーは、いざ商品を出したときに「その商品を必要とする人たち」であるとは限りません。発信の方向が商品から逆算されていないからです。商品を決めてから接点を作れば、数は少なくても、本命商品につながる見込み客が集まります。集客は量ではなく、受け皿との一致で決まります。

本業にする覚悟がまだ固まりません。固まってから決めるべきでしょうか?

覚悟は、待っていても固まりません。私の経験では、順番は逆で、商品を決めて価格を付けるという行為が、覚悟を固めてくれます。気持ちはいつでも揺れるものですが、決めごとは揺れないからです。覚悟が5割でも、まず商品の骨組みを3行(誰を・どこへ・どうやって)書いてみてください。書き上がったものを眺めたときに感じる「これを本当にやるのか」という重さこそが、覚悟が形になり始めたサインです。

本命商品は複数あってもいいですか?

最初はひとつに絞ることを強くおすすめします。商品が複数あると、ポジションの一文がぼやけ、集客の逆算も分散し、結局どの商品も中途半端になります。ひとつの本命商品が安定して売れるようになってから、入口の商品や次の段階の商品を足していく。順番は常に、本命がひとつ決まってから、です。

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この記事を書いた人

株式会社マインドコーチ 代表取締役 安達慎一

集客やセールスが苦手な稼げないコーチの方向けに、コーチングビジネスの基本を教えています。起業家を育成しています。

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