なぜ、スキルを教えても買ってもらえないのか。生成AIがやり方を教えてくれて、何なら作業まで代わりにやってくれるようになったからです。いまコーチがお客様に与えるものは、スキルではありません。悩みを生み出している根本原因を本人に理解してもらうことと、理想の未来へ行くための思考を整え、正しい行き方を本人に決めてもらうことです。売り方を考え始めたときは、この「与えるもの」に戻る合図です。
この記事では、Xに書いた投稿の全文、スキルが買う理由にならなくなったわけ、与えるものの一つ目と二つ目、教えるだけでは元に戻ってしまう理由、そして売り方を考え始めたときに確かめることを、順番に書きます。
先日、私はXにこう書きました——お客様にどれだけのものを与えているか

先日、私はXに、次の文章を書きました。そのまま載せます。
あなたはお客様にどれだけのものを与えていますか?
今、生成AIの登場でスキルを売ってもほぼ売れません。
つまり、お客様にスキルを与えても、買ってもらえません。
なぜなら、生成AIが全て教えてくれて、何なら全部やってくれるからです。
そんなものにお金を払うのは、情報弱者の人だけになりました。
では、何をお客様に与えるといいのでしょうか?
一つは、悩みを生み出している根本原因を教えてあげて理解してもらうことです。
根本原因がわからないまま、理想の未来に行こうとしている人がたくさんいます。
根本原因を理解して、まずはここを治さないといずれまた同じところが壁になります。
だからまずは根本原因を理解してもらい、顕在化してもらうことがとても大事です。
次に、理想の未来に行く方法を理解してもらうということです。
この場合、理想の未来に行くための思考を整えるということです。
例えば、多くの人は、AとBの選択肢があり、Aが正しいと思っていると必ずAを選びます。
Bは間違っていると思っているので、いくら正解を教えてもBを選ぼうとしません。
Aが正解と思っていても1年も2年もAばかりやっても理想の未来に行けなければ、流石にBが正しいはずです。
これをせっかくやってきたからとか、ここまで学んだんだからあと少しということをしているといくら時間があっても足らなくなります。
だから、なぜBが正しいのか、理解してもらい、Bで理想の未来に行くと決めてもらう必要があります。
この過程をせずに、Bが正しいんですよと教えても、Aだと思っているのだから、3ヶ月もするとやっぱりAの方が正しいんじゃないかと思い始めて、またAに戻ってしまいます。
これが9割の人がうまくいかない理由です。
この選択肢がいくつかあり、全て正解にしなければ理想の未来には行けないので、どこかで間違えてしまって行けない人がほとんどです。
この流れをしっかり理解して、お客様に正しい行き方を与え続けることができないとお客様に選んでもらえません。
大体が、商品が売れないと「どうやったら売れるのだろうか」とすぐに売ることばかりにフォーカスしてしまい、お客様に価値を与え続けた対価をいただくことを忘れてしまいます。
どうやったら買ってもらえるのだろうかと思い始めたら大体黄色信号です。
このことを理解して、どうやったらお客様に価値を与えられるのかをしっかり考えてくださいね。
期間の数字や、いくつかの強い言葉は、投稿の言葉としてそのまま載せました。本文では数字を使わず、「何年やっても」「しばらくすると」「ほとんどの人」という言い方で書きます。
この投稿を、順番にほどきます。先に書いておくと、これはお客様を責める話でも、コーチを責める話でもありません。自分が正しいと思っている方を選び続けるのは、人として当たり前のことです。この記事で書きたいのは、どちらが悪いかではなく、コーチがお客様に何を渡すのか、という一点です。
投稿の問いは、1行目の「あなたはお客様にどれだけのものを与えていますか?」です。聞いているのは、量の前に中身です。スキルなのか、それとも別のものなのか。残りの23行は、この問いへの答えです。
生成AIの時代に、スキルは商品にならない——「教えてもらえること」は、買う理由にならない

投稿の2行目と3行目に、私はこう書きました。「今、生成AIの登場でスキルを売ってもほぼ売れません」。そして、「つまり、お客様にスキルを与えても、買ってもらえません」。理由は4行目のとおりです。「生成AIが全て教えてくれて、何なら全部やってくれるからです」。
ここで言うスキルとは、やり方のことです。集客の手順、文章の型、商品の作り方、話の進め方。こうしたものは、いまは生成AIに聞けば、整った形で返ってきます。文章の下書きのように、作業そのものを引き受けてくれることもあります。
そうなると、やり方を渡すだけの商品は、お客様の手元で生成AIと比べられます。聞けば答えてくれるものに、改めてお金を払う理由は、お客様の側にはありません。投稿では強い言葉で書きましたが、言いたかったのは、スキルだけにお金を払う人は減りました、ということです。お客様の目が厳しくなったのではなく、お客様の手元にある道具が変わったのです。
生成AIを敵にする話でもありません。生成AIは、お客様にとってもコーチにとっても、便利な道具です。ただ、コーチが「やり方を知っている人」として立っていると、お客様から見て、生成AIと同じ場所に並ぶことになります。
AIの時代に、コーチの仕事のどこが置き換わっていくのかは、AIでコーチングは要らなくなるのか(記事009)で書きました。その記事では、知識や情報を渡すだけの部分は、すでにAIに置き換わり始めている、と書いています。ここでは繰り返しません。この記事で考えたいのは、その先にある、与える側の問いです。投稿の6行目に書いた、「では、何をお客様に与えるといいのでしょうか?」。答えは2つあります。
与えるものの一つ目——悩みを生み出している根本原因を、本人に理解してもらう

投稿の7行目に、一つ目をこう書きました。「一つは、悩みを生み出している根本原因を教えてあげて理解してもらうことです」。この記事の中心になる言葉を、ここで定義しておきます。
お客様に与える価値とは、スキルそのものではなく、悩みを生み出している根本原因を本人が理解することと、理想の未来へ行くための思考を整えること、です。
投稿の8行目には、「根本原因がわからないまま、理想の未来に行こうとしている人がたくさんいます」と書きました。これも、責める言葉ではありません。悩みを抱えている人に見えているのは、たいてい、悩みそのものです。申し込みが来ない。お客様が続かない。値段を伝えられない。いちばん困っていることなので、まずそこをなんとかしたいと思うのは自然です。けれど、その悩みを生み出しているものは、悩みと同じ場所にあるとは限りません。
庭の雑草を思い浮かべてください。地面から出ている葉をちぎれば、その日の庭はきれいになります。けれど、根が残っていれば、しばらくすると同じ場所から、また同じ草が生えてきます。きれいに保ちたいなら、葉ではなく根を抜く必要があります。
投稿の9行目に書いたのは、このことです。「根本原因を理解して、まずはここを治さないといずれまた同じところが壁になります」。根本原因を残したまま方法だけを渡すと、お客様は、ある程度は前に進みます。けれど、同じ根から出てくる別の壁に、またぶつかります。方法を変えても、壁の出どころは変わっていないからです。
ここで大事なのは、「教える」と「理解してもらう」は違う、ということです。根本原因は、コーチが言い当てて伝えるだけなら、すぐに終わります。けれど、言われただけの原因は、本人の中ではまだ「そう言われた」という情報です。情報なら、生成AIからも受け取れます。
投稿の10行目には、「だからまずは根本原因を理解してもらい、顕在化してもらうことがとても大事です」と書きました。顕在化とは、本人の中に隠れていたものが、本人に見えるようになることです。この記事では、根本原因を本人が自分の口で言えるようになったところを、顕在化と呼びます。自分の悩みがどこから来ていたのかを、本人の言葉で言える。そこまで行って初めて、根本原因は、本人が自分で扱えるものになります。言えるようになった人は、同じ根から次の壁が出てきたときにも、それに気づけます。
個別相談800人超、セッション6,000時間超を重ねてきた今も、方法の前に根本原因がある、という私の考えは変わっていません。
悩みの原因を自分で探そうとするとどうなるかは、なぜ、ノウハウコレクターになってしまうのか(記事026)で書きました。その記事では、自分で見つけた問題は、たいてい本当の問題ではなく、見えているのは結果で、原因は本人から見えない場所にある、と書いています。ここでは繰り返しません。この記事で書き足したいのは、与える側の話です。原因を見つけて伝えるだけでなく、本人が自分の言葉で言えるところまで一緒に進む。それが、一つ目に与えるものです。
与えるものの二つ目——理想の未来に行くための思考を整える

投稿の11行目と12行目に、二つ目をこう書きました。「次に、理想の未来に行く方法を理解してもらうということです」。そして、「この場合、理想の未来に行くための思考を整えるということです」。方法を理解してもらう、と書いて、すぐに、思考を整える、と言い直しました。行き方の手順を教えるだけなら、またスキルの話に戻ってしまうからです。与えたいのは手順ではなく、その行き方を本人が選べるようになる考え方のほうです。
投稿では、AとBの2つの選択肢で書きました。Aが正しいと思っている人は、Aを選びます。そして、「Bは間違っていると思っているので、いくら正解を教えてもBを選ぼうとしません」。
Aを選び続けるお客様は、間違っている人ではありません。正しいと思っているから、当然そうしている人です。間違っていると思う方を、わざわざ選ぶ人はいません。だから、本人がBを選べないのは、当たり前のことです。
投稿の15行目には、「Aばかりやっても理想の未来に行けなければ、流石にBが正しいはずです」と書きました。何年やっても届かないなら、外から見れば、Aではない方に答えがあることは見えています。けれど、本人の中では、Aはまだ正しいままです。そこに、16行目の「せっかくやってきたから」「ここまで学んだんだから」が重なります。続けてきた時間が長いほど、Aをやめることは、それまでの自分を否定することのように感じられます。だから、あと少し、と続けます。そうしていると「いくら時間があっても足らなくなります」。
本人の中で起きていることを、外から見えていることと並べると、次のようになります。
| 本人に見えているもの | 実際に起きていること | コーチが与えること |
|---|---|---|
| Aが正しいから、Aを選び続けている | Aを続けても、理想の未来に近づいていない | Aでここまで来た結果を、本人が自分で見られるようにする |
| Bは間違っているから、選ばない | Bをやったことがないので、間違いかどうかは、まだ確かめていない | なぜBなのかを、本人の状況に当てはめて考える材料 |
| ここまでやってきたのだから、あと少し | 続けてきた時間が、Aをやめにくくしている | これまでの時間ではなく、行きたい未来から選び直す見方 |
表の真ん中の列は、本人からは見えにくいものです。だから、ここがコーチの仕事になります。右の列のどれも、「Bを選びなさい」と指示することではありません。本人が自分で選び直せるように、考える材料と順番を整えることです。投稿で「思考を整える」と書いたのは、このことです。
自分では選ばないところに答えがある、という話は、学ぶ側の立場からなぜ、我流がうまくいかないのか(記事040)で書きました。その記事では、自分ができることと、自分がいいと思うことの中からしか、やることを選ばないので、前に進まないなら、答えは自分が選んでいないところにある、と書いています。ここでは繰り返しません。この記事は、与える側の話です。本人がBを選べないのは当たり前。だからこそ、コーチの仕事は、なぜBなのかを理解してもらい、Bで行くと決めてもらうところまであります。
「Bが正しい」と教えるだけでは、戻ってしまう——理解してもらい、決めてもらう過程

投稿の17行目に、私はこう書きました。「だから、なぜBが正しいのか、理解してもらい、Bで理想の未来に行くと決めてもらう必要があります」。そして18行目で、その過程を飛ばしたときに起きることを書きました。「この過程をせずに、Bが正しいんですよと教えても、Aだと思っているのだから」、しばらくすると「やっぱりAの方が正しいんじゃないかと思い始めて、またAに戻ってしまいます」。
教えてもらったBは、本人の中では、まだ「人から言われたB」です。最初は言われたとおりにやってみます。けれど、やったことのない方なので、すぐには結果が見えません。そのうちに、慣れたAの方が正しかったのではないか、という気持ちが戻ってきます。Aが正しいという思いは、本人の中から消えていないからです。自分で決めていないBは、迷ったときの支えになりません。
だから、教えることと、本人が決めることの間には、過程が要ります。順番にすると、次の3つです。
- Aでここまで行けなかった事実を、本人の言葉で確かめてもらう
- なぜBなのかを、本人の状況に当てはめて理解してもらう
- Bで行くと、本人に決めてもらう(コーチが決めない)
1つ目は、Aを否定することではありません。コーチが「Aではだめでした」と言えば、本人は自分を守るために、Aをかばいたくなります。本人が自分で見て言葉にすれば、かばう必要はなくなります。
2つ目は、Bの一般的な正しさではなく、本人の場合になぜBなのかを理解してもらうことです。一般論としての正しさなら、生成AIでも説明できます。本人の状況や、本人の根本原因と、Bがどうつながるのか。そこがつながったとき、Bは「言われたB」から「分かったB」に変わります。
3つ目は、決めるのは本人だ、ということです。コーチが代わりに決めると、それはまた「言われたB」に戻ります。本人が決めたなら、迷ったときに戻る場所は、Aではなく、自分が決めたときの理由になります。
投稿の20行目には、「この選択肢がいくつかあり、全て正解にしなければ理想の未来には行けない」と書きました。AかBかを選ぶ場面は、理想の未来までの間に何度も出てきます。どこか1つでAに戻れば、そこで止まります。ほとんどの人がうまくいかない理由は、ここにあります。だから、この過程は一度与えれば終わり、というものではありません。選ぶ場面が来るたびに、理解してもらい、決めてもらう。21行目に書いた「お客様に正しい行き方を与え続ける」とは、このことです。
売り方を考え始めたら、黄色信号——与え続けた対価として、お金をいただく順番

投稿の22行目には、こう書きました。「大体が、商品が売れないと「どうやったら売れるのだろうか」とすぐに売ることばかりにフォーカスしてしまい、お客様に価値を与え続けた対価をいただくことを忘れてしまいます」。
商品が売れないとき、売り方を考えるのは、自然な動きです。ただ、そこに目が向いた瞬間、順番が入れ替わっていることがあります。本来は、与え続けたものがあって、その対価としてお金をいただきます。売り方から考え始めると、いただく方が先に立ってしまうのです。
だから23行目に、「どうやったら買ってもらえるのだろうかと思い始めたら大体黄色信号です」と書きました。黄色信号は、このまま進む前に、いったん確かめた方がいい、という合図です。売り方を考えるのが悪いのではありません。順番が入れ替わった合図として受け取ってほしい、ということです。
この考えは、昔から変わっていません。2020年に書いたお客さまに価値を提供することだけ考えるという記事で、私はこう書きました。「ビジネスは、価値と価値の交換です。あなたの提供する価値とお客さまが払うお金の交換です。」その記事では、集客ができても、クロージングがうまくなっても、お客さまが価値を感じなければ買ってもらえない、とも書いています。お金は、交換の片側です。もう片側にある価値が先にあって、初めて交換が成り立ちます。
その価値が、この記事で書いてきた、根本原因の理解と、理想の未来へ行くための思考です。黄色信号がついたときは、売り方の前に、次の3つを確かめてください。
- 自分が与えているものは、スキルか、それとも根本原因の理解か
- お客様は、自分の根本原因を、自分の言葉で言えるか
- お客様は、Bで行くと、自分で決めたか
1つ目で、与えているものがやり方だけなら、生成AIと同じ場所に並んでいます。2つ目で、お客様が根本原因を自分の言葉で言えないなら、まだ顕在化していません。3つ目で、こちらが決めたBなら、しばらくするとAに戻るかもしれません。どれかが欠けているなら、直すのは売り方より先に、与えるものの中身です。順番は、与える。お客様が理解し、決める。その対価をいただく。売り方は、この順番を確かめたあとで考えても遅くありません。
買う前にお客様に何をどれだけ受け取ってもらうか、という量と順番の話は、なぜ、お客様が自分の商品を買わないのか(記事046)で書きました。その記事では、お客様のニーズを叶える人はたくさんいて、「この人から買おう」と決めてもらえるかどうかは、買う前にその人からどれだけの情報を受け取ったかで決まる、と書いています。ここでは繰り返しません。この記事で書き足したいのは、与えるものの中身です。与えているのがスキルだけなら、量を増やしても、生成AIと比べられる場所に並んだままです。
与え続けたからといって、それで売れると決まるわけではありません。ただ、根本原因と行き方を与え続けている人は、お客様に選ばれる側に立てます。そして、売り方に追われる場所から、与え続けた対価をいただく順番に戻れます。投稿の最後に「どうやったらお客様に価値を与えられるのかをしっかり考えてくださいね」と書いたのは、そのためです。
よくある質問
生成AIに聞けば、根本原因も分かるのではありませんか。
一般論としての原因なら、生成AIもたくさん挙げてくれます。ただ、挙げられた原因は、本人にとってはまだ「そう言われた」という情報です。それが自分のことだと理解し、自分の言葉で言えるようになるところは、情報を受け取るだけでは進みにくいのです。
根本原因を伝えても、お客様が認めてくれません。
認めないのは、自然なことです。お客様は、いまのやり方が正しいと思っているから、そうしてきたのです。伝えて認めてもらおうとするより、本人が自分で気づけるように、問いで本人に戻してください。本人の言葉で言えるようになったとき、それは「言われたこと」ではなく「分かったこと」になります。
Bに決めてもらうまで、時間がかかります。
時間がかかるのが普通です。本人にとってBは、間違っていると思ってきた方だからです。教えるだけで先に進めた方が、早く見えます。けれど、本人が決めていないBは、しばらくするとAに戻り、戻った分だけやり直すことになります。それを考えれば、決めてもらう過程にかける時間は、遠回りではありません。
スキルを教える講座は、もう要らないのですか。
要らなくなるわけではありません。スキルは、理想の未来に行くための道具として、これからも要ります。違いは、スキルだけを渡すのか、スキルの上に根本原因の理解と行き方が乗っているのか、です。
お客様に与える価値とは、スキルそのものではなく、悩みを生み出している根本原因を本人が理解することと、理想の未来へ行くための思考を整えること、です。生成AIがやり方を教えてくれる時代に、スキルだけでは、お客様が買う理由になりにくくなりました。根本原因は、本人の言葉で言えるところまで理解してもらう。行き方は、なぜそうなのかを理解してもらい、本人に決めてもらう。売り方を考え始めたら、与えているものの中身に戻る。与え続けた対価としてお金をいただく、この順番に戻れば、お客様に選ばれる側に立てます。私の考え方の全体像は、マインドコーチとしてのコーチングの考え方にまとめています。
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