AIでコーチングは要らなくなるのか——クライアントにAIを入れてみて分かったこと

AIでコーチングは要らなくなるのか。答えを先に書きます。私の実感では、コーチングの半分は、すでに要らなくなり始めています。要らなくなっていくのは、知識や情報を渡すだけの部分です。一方で、クライアントに「何を売るか、誰に向けるか、いくらにするか」を決めさせ、その決断に向き合わせ、やり切るまで伴走する部分は、AIを入れれば入れるほど、むしろ重さを増しています。私はビジネスコーチとして、自分の業務に生成AIや自動化ツールを深く使い、クライアントにもAIを導入させている立場です。この記事では、外部の予測ではなく、クライアントにAIを入れたときに実際に起きたことをもとに、AIの時代にコーチの仕事のどこが消え、どこが残るのかを書きます。

目次

AIでコーチングは要らなくなるのか——私の答えは「半分は、すでに要らなくなっている」

道具箱が半分に割れ、歯車と書類はベルトコンベアで運ばれ、旗と椅子だけが残る図——コーチングの半分は要らなくなる

「AIが進化したら、コーチの仕事はなくなるのではないか」。この不安を、最近の個別相談で何度も聞くようになりました。逆の立場の声もあります。「AIに相談すれば十分なので、コーチにお金を払う理由が分からない」。どちらも、もっともな問いです。そして私は、この問いを外から眺めている人間ではありません。私は自分の事業でAIを使い倒している側であり、同時に、AIに置き換えられると言われている側の職業でもあります。

私の立場を先に明かします。私の事業は、AIなしではもう回りません。文章の下書き、記事の整形、メール配信の仕組みの設定、広告文の案出し。以前なら丸一日かかっていた作業が、いまは短時間で終わります。そしてそれを自分だけで使うのではなく、契約したクライアントにもAIツールを導入してもらい、作業を任せる前提で事業を組み立ててもらっています。つまり私は、コーチの仕事がAIでどこまで置き換わるのかを、自分とクライアントの両方で、毎日試している人間です。コンサル歴15年のあいだで、ここまで短期間に道具が変わったことは一度もありません。

その実感を、正直に書きます。コーチングの仕事の半分は、すでにAIに置き換わり始めています。置き換わっているのは、「知っていることを渡す」部分です。集客の手順、文章の書き方、商品の作り方の一般論。こうした情報は、AIに聞けば、深夜でも即座に、しかも丁寧に返ってきます。コーチが情報を渡すだけの存在なら、その部分でAIに勝てる理由は、私には見当たりません。

ただし、それは半分の話です。私が置き換わっていないと感じている残り半分については、この記事で順に書いていきますが、先に結論だけ置いておきます。AIを入れると、作業は消えます。すると、作業の陰に隠れていた「決めること」が、むき出しになって残るのです。

クライアントにAIを入れてみて分かったこと——作業が消えると「決めること」だけが残る

机の紙が吹き飛び、クエスチョンマークの板だけが現れて人が見つめる図——作業が消えると決めることが残る

理屈より先に、実際に起きたことを書きます。あるクライアントに、AIツールを導入してもらったときのことです。それまで、その方はブログ記事を1本書くのに数時間かけていました。導入して最初の1回、記事の下書きが10分ほどで、それらしい形になって出てきました。本人は驚いていました。「こんなに速いんですか」と。作業の速さだけで言えば、以前の10倍近くになった感覚だったと思います。

ところが、その次に、その方はこう言いました。「速いけれど、まだ自分の言葉ではない」。ここからが、私の仕事でした。AIが出した文章は、整ってはいるものの、誰に向けて何を約束する文章なのかが定まっていない。それは、AIの性能の問題ではありません。書く本人の中で、誰に向けて、何を売り、どこまで連れて行くのかが、まだ決まりきっていなかったのです。作業に時間がかかっていた頃は、その未決定が、作業の忙しさに隠れて見えませんでした。作業が10分で終わるようになった途端、決まっていないものが、そのまま画面に映るようになったのです。

そこからやったことは、AIの使い方の指導ではありません。「あなたは誰の、どんな未来のための専門家なのか」「この記事で読者に何を約束するのか」を、本人の口から出るまで問い続けることでした。それが定まると、AIに渡す指示が変わり、出てくる文章も、その方の言葉になっていきました。その方はいまでは、以前より長い記事を毎日書いて、公開し続けています。AIが速くしたのは作業で、その方を前に進めたのは、決めたことのほうでした。

この体験を経て、私は自分の仕事をこう定義し直しました。

コーチとは、クライアントの代わりに決める人ではなく、クライアントが決めることから逃げられなくする人のことです。

私は個別相談800人超・セッション6,000時間超の記録を見てきましたが、この記録の中で、人が止まる場所はほとんど同じです。作業ができないから止まるのではなく、決めていないから止まっています。AIは作業を消してくれました。その結果、止まっている本当の場所が、以前よりはっきり見えるようになった。これが、クライアントにAIを入れてみて分かった、いちばん大きなことです。

AIに任せられる仕事と、任せられない仕事——線を引いてみる

冷蔵庫に食材が自動で補充される横で、料理人が皿を前に考え込む図——AIは食材を補充する道具、決めるのは料理人

では、コーチの仕事のうち、どこがAIに渡せて、どこが渡せないのか。自分の事業とクライアントの両方で試してきた実感を、表にしてみます。

観点 AIに任せられる仕事(作業) AIに任せられない仕事(決めること)
中身 文章の下書き、記事の量産、配信や設定の作業、情報の整理、案出し 何を売るか、誰に向けるか、いくらにするか、やり切るかどうか
速さ 数時間が数分になる。回数を重ねるほど精度も上がる 速くならない。決めるのは本人の時間と覚悟の問題
止まる理由 使い方を知らない(教えれば動く) 決めると審判が来るのが怖い(教えても動かない)
コーチの役割 導入を手伝い、任せる前提で事業を組む 決めるまで問い続け、決めたあとを伴走する

この表で大事なのは、下の2行です。作業は、知らないから止まるので、教えれば動きます。AIはここが圧倒的に得意で、教えれば教えるほど、思ったとおりのものが出てくるようになります。最初は確認も手直しも要りますが、それが済めば、同じ品質のものが何度でも出てきます。

一方、決めることは、知らないから止まるのではありません。決めると、市場からの審判が来るからです。「私は、この人に、これを、この値段で売る」と決めた瞬間から、申し込みが入らないかもしれない、値段を見て去られるかもしれない、という現実が始まります。この怖さは、情報をいくら集めても消えません。AIに何度聞いても消えません。ここは、AIの性能の話ではなく、人が向き合うしかない場所だと、私は現場で感じています。

実は、この構造は、AIが登場する前から同じでした。学びを重ねて、スキルを増やしても、決めなければお金に変わらない、という話をなぜ、スキルを増やしても稼げないのかで書きました。スキルは冷蔵庫の中の食材にすぎず、商品という一皿になって初めてお金に変わる、と。AIは、この冷蔵庫に食材を自動で補充してくれる道具です。素材を作る速さは、確かに桁違いになりました。しかし、どの食材で、誰に、どんな一皿を出すのかを決めるのは、今も昔も、料理人の仕事です。道具が増えても、決めることは減らないのです。

AIが速くなるほど、コーチの価値は「情報」から「設計と判断」へ移る

本の山の皿が上がり、設計図と判子の皿が下がる天秤の図——価値が情報から設計と判断へ移る

ここまでの実感を踏まえて、私が観察している変化を書きます。AIが速く、賢くなればなるほど、コーチの価値は、情報を提供することから、設計と判断を担うことへ移っていく。これは未来の予測というより、いまクライアントとの現場で、すでに起きている移動です。

分かりやすい変化がひとつあります。個別相談に来る方が、来る前にAIに相談してくるようになったことです。集客の方法も、商品の作り方も、すでに一通りAIに聞いて、整理された答えを持っています。以前なら、私がその一般論を渡す時間が、セッションの一部を占めていました。いまは、その時間が要りません。では、その方が来る理由がなくなったのかというと、逆でした。相談の中身は「やり方が分からない」から、「やり方は分かったが、どれをやるべきか決められない」「決めたつもりだが、動けない」に変わっています。情報を持ったうえで止まっている人が、以前よりはっきり増えたのです。

これが、私の言う「価値の移動」です。情報を提供するコーチの価値は、AIが同じ情報を無料で即座に出せるようになった分だけ、私の見るところ、下がっていきます。私は2019年に情報提供だけのコーチ、コンサルは今後いなくなるという記事を書きました。7年前の時点で、情報をなぞるだけのコーチは選ばれにくくなる、と見ていたのです。当時想像していたよりずっと速く、しかも徹底的に、AIがその状況を作りました。翌年には情報に価値が無くなるという記事も書いています。答えは、いまも変わっていません。

そして、下がった分の価値は、消えるのではなく、別の場所へ移ります。移り先は、設計と判断です。この人の手持ちで、誰を、どこまで連れて行く商品にするのか。その商品を、どの言葉で、どの経路で届けるのか。AIが出した10案のうち、どれを選び、どれを捨てるのか。決めたことを、申し込みが入らない最初の数週間もやめずに続けられるか。こうした設計と判断と実行は、情報ではなく、責任の話です。AIは案を出しますが、責任は引き受けません。責任を引き受けるのは本人で、それを横で支え、逃げ道を塞ぐのがコーチです。ここは、私の実感では、AIが速くなるほど、むしろ求められる場面が増えている場所です。

コーチをしている方に、ここで問いを置きます。あなたの契約の中身は、情報ですか、それとも設計と判断ですか。もし、セッションの時間の大半が「やり方を教える」ことで埋まっているなら、その部分は、遠からずAIとの比較にさらされるでしょう。逆に、クライアントに決めさせ、決めたことをやり切らせる部分で対価をもらっているなら、AIはあなたの競争相手ではなく、作業を肩代わりしてくれる、いちばん働き者の部下です。

コーチもクライアントも、AIを避けない——作業を渡して、本質に時間を使う

作業道具を機械に渡し、空いた両手で旗を立てる人の図——作業をAIに渡して本質に時間を使う

結論として、私がクライアントに勧めている順番を書きます。AIを避けるのでも、AIに頼り切るのでもありません。作業をAIに渡し、浮いた時間を、決めることと向き合うことに使う。順番は次のとおりです。

  • 手順① まず、AIに渡せる作業を渡す——文章の下書き、記事の整形、配信や設定の作業、案出し。最初は確認と手直しが要りますが、それを惜しまなければ、作業の時間は一気に減ります。「AIは使えない」と言う人の多くは、この最初の教育の手間を省いています
  • 手順② 浮いた時間で、決まっていないものを直視する——作業が消えると、決まっていないものが画面にそのまま映ります。誰を、どこへ、いくらで。この3つが本人の言葉で言えるまで、AIの出力を「自分の言葉」にはできません。商品の決め方はコーチングを本業にする人が最初にやることに書いたとおりです
  • 手順③ AIの出力を、決めたことで採点する——AIは案を無限に出しますが、選ぶ基準は、決めた商品と決めた相手です。基準がないまま案を眺め続けると、AIは新しい先送りの道具になります。「どの案がよいか」ではなく、「決めた相手に、決めた約束が伝わる案はどれか」で選んでください
  • 手順④ 決めたことを、やり切る側に時間を使う——AIが速くした分の時間を、さらなる作業に使わないでください。使い先は、実際に売る、断られる、直す、続ける、という決めたあとの実行です。ここに時間が回り始めたとき、AIの導入は初めて売上に変わります

手順③と④について、ひとこと添えます。私は以前、手動で売れないものは自動化しても売れないという記事を書きました。売れる商品と経路が手動で確認できていないうちに自動化しても、売れないものが速く回るだけだ、という話です。AIは、この「自動化」を、当時とは比べものにならないほど身近にしました。だからこそ、同じ注意が、いま以前より強く当てはまります。決めていない人がAIを持つと、決めていない状態のまま、出力だけが増えていきます。決めた人がAIを持つと、決めたことが速く形になります。道具は同じで、差は道具の手前にあります。

まとめます。AIでコーチングは要らなくなるのか。私の実感では、情報を渡すだけの部分は、すでに要らなくなり始めています。しかし、クライアントにAIを入れてみて分かったのは、作業が消えるほど、「何を売るか、誰に向けるか、いくらにするか、やり切るか」という決めることの部分が、むき出しになって残るということでした。ここは、少なくとも私の現場では、AIに肩代わりさせることができていません。だからコーチの価値は、情報提供から、設計と判断と実行の伴走へ移っていきます。コーチも、クライアントも、AIを避けないでください。作業はAIに渡し、浮いた時間を、決めることに使う。道具が増えても、決めることは減らない。この順番さえ守れば、AIはコーチングを消す存在ではなく、コーチングの本質だけを残してくれる存在になります。

よくある質問

コーチの仕事は、AIでなくなりますか?

断定はできませんが、私の観察では、なくなるのではなく、中身が入れ替わっています。情報を提供する部分は、AIが同じことを無料で即座にやるようになった分、選ばれにくくなっています。一方で、決めさせ、向き合わせ、やり切らせる部分は、相談に来る方の悩みが「やり方が分からない」から「決められない・動けない」へ移ったことで、以前より求められています。自分の契約のどこで対価をもらっているかを、確認してみてください。

AIに相談すれば、コーチは要らないのではありませんか?

情報を得る目的なら、AIで十分な場面が多いと思います。実際、私の個別相談に来る方の多くが、来る前にAIに相談しています。それでも来られるのは、情報を持ったうえで決められない、決めたつもりで動けない、という状態が、情報を足しても解消しないからです。AIは何度でも案を出しますが、あなたの代わりに決めることも、決めたあとの責任を引き受けることもしません。要るのは、情報ではなく、決めることから逃げられなくする相手です。

クライアントにAIを使わせると、コーチの仕事を減らすことになりませんか?

減るのは作業で、増えるのは本質の仕事です。私はクライアントにAIを導入してもらっていますが、それで契約の価値が下がったと感じたことはありません。作業が速くなると、クライアントは決めることに早くぶつかります。そのぶん、コーチが向き合う場面は、むしろ早く、濃くなります。作業を教えることで対価をもらっているなら減りますが、決めさせることで対価をもらっているなら、AIはあなたの仕事を前倒しにしてくれます。

AIで書いた発信は、読者に見抜かれませんか?

整った文章かどうかより、「誰に、何を約束している文章か」が定まっているかどうかを、読者は感じ取ります。本文のクライアントが「まだ自分の言葉ではない」と気づいたのは、まさにこの点でした。決めたことのない人がAIで書くと、誰にも刺さらない一般論が量産されます。決めた人がAIで書くと、その人の言葉になります。見抜かれるのはAIの使用ではなく、決めていないことのほうです。加えて、自分の声で話す場を持っておくと、本人であることの証明になります。

AIを使うのが苦手です。それでもコーチとしてやっていけますか?

やっていけますが、作業に時間を取られ続ける分、不利にはなります。ただ、AIの得意・不得意は、コーチの価値の中心ではありません。中心は、クライアントに決めさせ、やり切らせることです。まずは文章の下書きなど、ひとつの作業だけを渡すところから始めてください。最初の確認と手直しの手間を惜しまなければ、道具は思ったより早く手になじみます。苦手を理由に避け続けるより、小さく始めるほうを勧めます。

この記事の内容を、あなたのビジネスに当てはめて実践したい方へ。メールで課題を出し、私が直接添削する無料講座をやっています。読むだけの講座ではないので、本気の方だけどうぞ。
コーチングを本気で仕事にするメルマガ講座(各回メールコンサル付き)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

株式会社マインドコーチ 代表取締役 安達慎一

集客やセールスが苦手な稼げないコーチの方向けに、コーチングビジネスの基本を教えています。起業家を育成しています。

目次