コーチにメルマガはまだ必要なのか——LINEやSNSの時代に、メールで「篩(ふるい)」をかける理由

コーチにメルマガはまだ必要なのか、答えを先に書きます。必要です。ただし、多くのコーチが今やっている形のメルマガは、必要ありません。メールが古いのではなく、多くのコーチのメルマガが「配信」として作られていて、「篩(ふるい)」として設計されていないことが問題なのです。メルマガの役割は、情報を届けることではありません。順番に届けて考えを積み上げること、課題や行動を求めて本気の人だけを残すこと、その結果、体験セッションに来る人がほぼ決まっている状態を作ること。この3つです。この記事では、「メルマガは意味ない」「LINEやSNSで十分」と感じている方、あるいはメルマガをやっているのに体験セッションにつながらない方に向けて、メールで篩をかけるという設計の考え方を、私自身の創業期と現在の2つの設計を材料にしてお伝えします。

目次

メルマガが「意味ない」と言われる本当の理由——「配信」として作られ、「篩」として設計されていないから

配信は拡声器から紙が四方に散らばるだけだが、篩を通すと少数の本気の人だけが一本道を進む対比の図

「メルマガって、まだ意味があるんですか」。私の個別相談で、ここ数年よく出る質問です。続く言葉も、だいたい決まっています。「今はLINEの時代ですよね」「SNSで発信しているので、メルマガまでは手が回りません」「以前やっていましたが、開封されないのでやめました」。私は、ビジネスコーチとして個別相談800人超の記録を見てきましたが、メルマガをやめた人の話を聞いていくと、やめた理由はほとんど同じ場所にあります。反応がなかった、のです。

では、なぜ反応がなかったのか。そのメルマガの中身を見せてもらうと、これもほとんど同じです。お役立ち情報が届く、告知が届く、近況が届く。読み手にとっては、読んでも読まなくても困らないメールです。そして、読み手に何も求めていない。つまり、そのメルマガは「配信」なのです。発信者から読み手へ、一方向に情報を送る道具として作られている。それが読まれないのは、メールという道具が古いからではなく、SNSでいくらでも手に入る種類の情報を、わざわざメールで受け取る理由が読み手にないからです。

土台として、言葉の定義を書いておきます。

コーチにとってのメルマガとは、見込み客に考えを順番に届け、課題や行動を求めることで本気の人だけを残し、本命商品の入口である体験セッションに来る人をあらかじめ絞り込むための、篩の道具のことです。

この定義には、「情報提供」という言葉が入っていません。篩です。私は2020年にステップメールで成約率を上げる方法という記事で、ステップメールは、商品をいらないと言われる前に、その人を先に外してくれる仕組みだ、と書きました。あれから6年経ち、道具はLINEや動画やAIへと増えましたが、私の考えは変わっていません。むしろ、道具が増えた今のほうが、篩の設計の有無が結果を分けるようになっています。「配信」のメルマガは、道具が変わればそのまま古くなります。「篩」のメルマガは、道具が何であれ、機能します。

メルマガの役割は3つ——順番に届ける・本気の人だけを残す・体験に来る人が「ほぼ決まっている」状態を作る

番号順の封筒が階段状に積み上がり、途中に課題の提出箱があり、最上段の扉の前に椅子が1脚だけある図

篩として設計されたメルマガは、何をしているのか。役割は3つに分かれます。順番も含めて、表にしておきます。

役割 「配信」のメルマガ 「篩」のメルマガ
① 順番に届けて、考えを積み上げる(教育のパーツ) 思いついた順に、単発の情報が届く。1通ごとに完結し、前の通との関係がない 1通目から決まった順番で届く。前の通で考えたことの上に、次の通が積み上がる。読み終える頃には、あなたの考え方の全体像が相手の中にできている
② 課題や行動を求めて、本気の人だけを残す(篩) 読み手に何も求めない。読んでも読まなくても、次の通は同じように届く 課題を出し、提出や返信を求める。行動しない人は自然に離れ、行動した人だけが先へ進む。残った人は「読んでいる」ことが分かっている人
③ 体験セッションに来る人が「ほぼ決まっている」状態を作る 誰が申し込んでくるか分からない。当日、ゼロから信頼を作り、ゼロから商品を説明する 最後まで進んだ人だけが申し込む。あなたの考え方、本命商品があること、価格の目安まで知ったうえで来るので、当日は確認だけで済む

役割①、順番に届けること。これは、SNSにはできないことです。SNSの投稿は、読み手がどれから見るかを選びます。1年前の投稿から見る人もいれば、昨日の投稿しか見ない人もいる。だから、考えを積み上げていく「教育のパーツ」として、SNSは使えないのです。あなたの考え方を理解してもらうには、順番があります。まず今の悩みの正体を知ってもらい、次にその原因を、次に解決の方向を、そして最後に本命商品を、という順番です。この順番を、登録した全員に同じように届けられる。これがメールの、そしてステップLINEのような順番に送れる道具の、いちばん大きな価値です。

役割②、本気の人だけを残すこと。私は2019年にメルマガ登録されても高額商品が売れない理由という記事で、無料で情報だけを集めたい人を先に外すには、面倒なことをしてもらうしかない、と書きました。課題を出す、というのはそのための設計です。課題を出すと、登録者の多くは離れます。それでいいのです。離れた人は、あなたの本命商品を買う人ではなかった、ということが、体験セッションの前に分かった。これは損失ではなく、体験セッションで断られる時間と気力を、前もって節約したことになります。しかも、課題を出してもらえば、その人が本当に読んでいることが分かります。開封率という数字よりも、はるかに確かな手応えです。

役割③、体験セッションに来る人がほぼ決まっている状態を作ること。売り込まない体験セッションの組み立て方で、契約は始まる前に半分決まっていて、その半分の1つが「来る前に何を知っているか」だと書きました。では、その事前情報を、誰が、どの順番で届けるのか。それがメルマガの仕事です。役割①と②を経て残った人は、あなたの考え方を順番に受け取り、課題までやってきた人です。その人が体験セッションに来たとき、当日にやることは、聞いていた話の確認だけです。売り込む必要がなくなるのは、当日の話し方が上手いからではなく、篩がその手前で仕事を終えているからです。

私の創業期のステップメール——21話・3つの課題・7日目の分岐

一本道に並ぶ封筒の途中に提出箱つきの分かれ道があり、片方の道だけが先へ続く図

ここから、実物の話をします。私が創業期に組んだステップメールは、全部で21話ありました。その中に、課題が3つ入っています。そして7日目に、課題の提出を求めました。提出した人には、次の通が届く。提出しない人には、次が届かない。この分岐を、7日目に置いていたのです。

この分岐で、登録者の多くが止まります。止まった人は、その先を読みません。当時の私にとって、それは「せっかく登録してくれた人を失っている」ように見えて、正直、怖い設計でもありました。それでも分岐を残したのは、提出した人のその先が、まったく違ったからです。最後まで完走した人の8割が契約になりました。体験セッションに5人来れば、4人以上決まる。登録10件に対して、1人が成約する。それが、当時の数字です。

ただし、この数字は、そのまま切り出して読まないでください。体験に来た人はほぼ決まっていた、というのは事実ですが、それはメルマガで篩にかけているからです。課題を出さない人、途中で読まなくなった人、そして、お金を出す準備ができていない人は、この設計では体験セッションまで来られません。7日目の分岐を越えて、21話を最後まで読み、3つの課題をやりきった人だけが、体験の椅子に座っている。その人たちが高い割合で契約するのは、当然の数字なのです。私の腕が良かったのではなく、篩がそこまでの仕事をしていた、というのが正しい読み方です。

ここで大事なのは、成約率の高さではなく、その裏側にある「登録10件で1人」という数字のほうです。登録数を無理に増やせば、この比率は下がります。私はなぜ、リストが取れても体験セッションに来ないのかという記事で、特典を増やして登録を増やすと、登録数は増えても成約率は下がる、と書きました。登録10件で1件と、登録20件で1件は、見かけの登録数が倍でも、結果は同じです。増えたのは特典目当ての人だけだからです。篩の設計とは、登録数を増やすことではなく、登録した人のうち、体験の椅子に座る人の質を決めることです。数字は、その結果としてあとからついてきます。

なぜ今、自動のステップメールをやめて「返事つきの10通」にしたのか

封筒の間に課題と手書きの返事の往復矢印があり、1通目だけ歯車、以降は万年筆が添えられた図

創業期の21話は、いわゆる自動のステップメールでした。登録すれば、決まった日に決まった通が届く。その中に、7日目の課題提出で先へ進めるかどうかが分かれる分岐を1つ置いていた、という形です。ところが、2026年の今、私が実際に運用している講座の設計は、かなり違うものになっています。

  • メール講座は10通。毎回、課題がある
  • 課題を提出しないと、次の通は届かない——つまり、日数で自動的に進むステップメールではない
  • 自動で届くのは1通目だけ。2通目からは、提出された課題に私が返事を書き、その返事と一緒に次の通が届く
  • 最後まで行った人だけが、体験セッションに申し込める

なぜ、こう変えたのか。理由は、その前にやっていた設計がうまくいかなかったからです。私はしばらくの間、教育動画を見てもらってから体験セッションを案内する形をとっていました。動画は便利です。順番に見てもらえれば、教育のパーツとしては成立します。ところが、動画からの申し込みは、「稼ぎたい」という程度の浅い層が多かったのです。体験セッションで、数字どおりに商品と価格を説明しても、お金を理由に断られる。動画を最後まで見た、という行動は、篩としては弱かった。見るだけなら、本気でなくてもできるからです。

そこで、篩を前に置きました。動画の「見る」を、メールの「課題を出す」に置き換え、しかも、日数で自動的に進む形をやめて、提出しなければ止まる形にした。さらに、私が一人ひとりに返事を書く。返事を書くのは手間ですが、返事を書くことで、私のほうも相手がどういう人か、体験セッションの前に分かります。相手のほうも、自分の課題に対して私が実際に何を返してくるかを、契約する前に体験しています。体験セッションに来る頃には、お互いに「ほぼ決まっている」状態ができているのです。

この変更で、私が改めて確かめたのは、道具の問題ではなく設計の問題だ、ということです。動画が悪いのではありません。動画を「見る」だけの設計にしていた私が、篩を置いていなかったのです。創業期の21話と、今の10通。通数も形も違いますが、共通しているのは1つだけです。相手に行動を求め、行動した人だけが先へ進む、という分岐がある。それが、篩としてのメルマガの正体です。

メルマガを使う理由は、メールアドレスが欲しいだけ——無料の場所に仕組みを置かない

借地の家が消しゴムで消えかけている左と、自分の土地の郵便受けに封筒がたまっている右の対比の図

ここまで読んで、「では、篩の設計さえあれば、道具はメールでなくてもいいのでは」と思われたかもしれません。半分は、そのとおりです。それでも私がメールを土台に置く理由は、原則の形で言うと、ひとつしかありません。メールアドレスが欲しいのです。

メールアドレスは、契約に至らなかった人にも、次に募集するときに送れます。10通の講座を途中でやめた人も、体験セッションで見送った人も、そのときは本気でなかっただけで、半年後、1年後に状況が変わることがあります。私が次の講座や次の募集を始めるとき、その人たちに、もう一度、順番に届けることができる。SNSでは、これができません。フォロワーがいても、その人たちに順番に送ることはできない。つまり、教育のパーツとしては使えない。メルマガやステップLINEなら、開封されたかどうかが分かり、課題を出してもらえば、読んでいることまで分かります。誰に何が届いていて、誰がどこまで進んだのかが、手元に残るのです。

そして、もうひとつ。私には、忘れられない経験があります。創業期、私はアメブロで読者を集めていました。読者が1000人を超えたとき、ブログが突然、削除されたのです。1000人の読者との接点は、私の手元に何ひとつ残りませんでした。無料のブログは、なくなるときは、その上に載せていた集客の仕組みごと消えます。SNSのアカウントも同じです。規約が変わる、凍結される、サービスそのものが下火になる。そのとき、あなたがそこに積み上げてきたものは、あなたの資産ではなかったことが分かります。

この経験から、私の原則ができました。無料の場所に、仕組みを置かない。無料の場所は、見つけてもらう入口として使い、見つけてくれた人には、メールアドレスを預けてもらう。メールアドレスは、どのサービスが消えても、自分の手元に残る資産です。今は見込み客リストが集まらない理由で書いたとおり、以前よりもリストが集まりにくい時代です。だからこそ、集まった1件を、借り物の場所ではなく、自分の資産として残る形で受け取っておく。メルマガを使う理由は、それだけです。

LINEやSNSを否定しない——道具が違っても、設計は同じ

旗の場所から吹き出しと封筒の2本の道が出て、同じ篩を通り1つの扉に合流する図

ここまで書くと、「メルマガの人」だと思われそうなので、はっきりさせておきます。私はLINEを否定していません。SNSも否定していません。否定しているのは、篩のない配信です。

LINEは、順番に送れる道具です。ステップ配信ができ、返信をもらえ、既読も分かります。つまり、この記事で書いた3つの役割は、LINEでも設計できます。課題を出し、返信した人だけを先に進め、最後まで行った人だけが体験セッションに申し込める。この設計思想は、道具がメールでもLINEでも、まったく同じです。私がメールを土台にしている理由は、前の章で書いたように、アドレスという資産の残り方の違いであって、LINEが劣っているからではありません。実際、両方を組み合わせて使うことは、ごく普通の設計です。

SNSも同じです。コーチングのクライアント獲得で、発信は追いかけるためではなく、見つけてもらうためにやる、と書きました。SNSの役割は、見つけてもらう場所です。そこで、あなたの旗に反応した人が、メールアドレスやLINEを預けてくれる。ここから先が、順番に届けて篩をかける場所です。SNSに篩の役割を持たせようとすると苦しくなりますし、メルマガに見つけてもらう役割を持たせることはできません。道具ごとに役割が違うだけで、どちらが要らない、という話ではないのです。

まとめます。コーチにメルマガは、まだ必要です。ただし、お役立ち情報を配信するメルマガは、必要ありません。メルマガの役割は、順番に届けて考えを積み上げること、課題や行動を求めて本気の人だけを残すこと、その結果、体験セッションに来る人がほぼ決まっている状態を作ることの3つです。私の創業期の21話も、今の返事つきの10通も、形は違いますが、相手に行動を求め、行動した人だけが先へ進む分岐を持っている点は同じです。そしてメールを土台に置く理由は、メールアドレスという、どのサービスが消えても手元に残る資産が欲しいから、それだけです。もし今、メルマガをやるべきか迷っているなら、道具を選ぶ前に、ひとつだけ確かめてみてください。あなたの配信の中に、読み手に行動を求め、行動しなかった人が先へ進めなくなる場所が、1か所でもあるか。それがなければ、メールでもLINEでも、それは篩ではなく、配信です。

よくある質問

登録者が少ないうちから、課題で篩をかけて大丈夫ですか?

大丈夫です。むしろ、少ないうちに篩の設計を入れておくほうが、あとが楽です。登録者が10人しかいないのに課題で半分が離れる、というのは、たしかに心細く見えます。しかし、離れた5人は、体験セッションに来ても契約に至らなかった可能性が高い5人です。残った5人のほうに、あなたの本命商品を必要としている人がいます。篩は、登録数を減らす道具ではなく、体験セッションに来る人の質を決める道具だと考えてください。登録数を増やす工夫は、篩の設計ができてから始めても遅くありません。

課題を出すと、読者に嫌がられませんか?

嫌がる人は、いると思います。そして、嫌がって離れる人は、あなたの本命商品を買う人ではなかった、というのが篩の考え方です。ここで大事なのは、課題の質です。単なる作業ではなく、相手が自分のビジネスや悩みについて考えざるを得ない問いにしてください。本気の人ほど、考える機会を与えられることを喜びます。嫌がられるのを恐れて課題をなくすと、残るのは配信だけです。

ステップメールは自動のほうが楽なのに、なぜ手動で返事を書くのですか?

創業期の私は、自動で運用していました。それでも機能していたのは、7日目に課題提出の分岐を置いていたからです。今、手動で返事を書いているのは、その分岐を1通ごとに置き、さらに私自身が相手を知るためです。返事を書けば、相手がどういう人かが体験セッションの前に分かり、相手も私が何を返す人かを契約前に体験できます。手間はかかりますが、体験セッションで断られる時間と比べれば、はるかに少ない手間です。自動か手動かは道具の選択で、大事なのは、行動した人だけが先へ進む分岐があるかどうかです。

LINEだけでやってはいけませんか?

いけなくはありません。LINEも順番に送れ、返信をもらえ、篩の設計ができる道具です。ただ、私はメールアドレスを土台に置くことを勧めています。理由は、無料のサービスの上に仕組みを置くと、そのサービスの規約や存続に、あなたの集客が左右されるからです。私自身、アメブロで読者1000人を超えたときに突然削除された経験があります。LINEを使うなら、メールアドレスも同時に預かる設計にしておく。どちらか一方ではなく、資産として残るほうを土台にする、という考え方です。

メルマガに何を書けばいいのか、分かりません。

お役立ち情報を書こうとするから、分からなくなります。書くべきことは、あなたの本命商品に至るまでの「順番」です。相手の悩みの正体、その原因、解決の方向、そして本命商品。この順番で、あなたの考え方を積み上げていく。1通ごとに、相手が自分について考える課題を添える。書くことは、あなたが本命商品でお客様に伝えていることの、手前の部分そのものです。本命商品が「誰を、どこへ、どうやって」の3行で言えていれば、メルマガに書くことは、そこから自然に決まります。

この記事の内容を、あなたのビジネスに当てはめて実践したい方へ。メールで課題を出し、私が直接添削する無料講座をやっています。読むだけの講座ではないので、本気の方だけどうぞ。
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この記事を書いた人

株式会社マインドコーチ 代表取締役 安達慎一

集客やセールスが苦手な稼げないコーチの方向けに、コーチングビジネスの基本を教えています。起業家を育成しています。

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