なぜ、好きなこと・できることでは稼げないのか——お客様がお金を払うのは「自分の理想の未来」だけ

なぜ、好きなこと・できることでは稼げないのか——お客様がお金を払うのは「自分の理想の未来」だけ

好きなことや、できることで稼ぐのは、ほぼ無理です。答えを先に書きます。お客様は、あなたの好きなことにも、できることにも、まったく興味がないからです。お客様は、興味のないことにはお金を払いません。お客様がお金を払うのは、自分のことだけです。だから、お客様の理想の未来が手に入るとしたら、お金を払ってくれる。そこで初めて、ビジネスになります。前回のなぜ、ゴールを決めた人から結果が出るのかでは、まず自分がゴールに行くと決める、と書きました。今回はその次の話です。行くと決めた。では、そのビジネスは何で稼ぐのか。自分の好きなこと、自分にできることを、売ろうとしていませんか。ここを間違えると、決めたゴールに向かって、着かない道を歩くことになります。

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先日、私はXにこう書きました——「僕がカラオケを歌っているのに、お金を払いますか」

歌う人の前の空の帽子と、聴く人がコインを差し出し頭上にハートと音符が浮かぶ、左右対比の図

先日、私はXにこう書きました。ビジネスは、自分ができることや好きなことで稼ぐのはほぼ無理。なぜかというと、お客様はあなたのできることや好きなことには、まったく興味がないから。お客様は、興味がないことにはお金を払わない。お客様がお金を払うのは、自分のことだけ。だから、お客様の理想の未来が手に入るとしたら、お金を払ってくれるので、そこで初めてビジネスになる、と。

この話を、私はセッションでよく、カラオケにたとえます。私がカラオケで気持ちよく歌っているとします。歌うのが好きで、上手いかどうかはともかく、本人は楽しい。さて、その歌に、あなたはお金を払いますか。払いません。当たり前です。私が好きで歌っているだけのものに、他人がお金を払う理由がないからです。では、プロの歌手のコンサートには、なぜお金を払うのか。歌手の好きなことに払っているのではありません。自分が、いい時間を過ごしたいからです。聴く側が、自分のために払っている。同じ「歌」でも、お金が動くかどうかを決めているのは、歌う側の気持ちではなく、聴く側に「自分の得たいもの」があるかどうかです。

コーチングも、まったく同じです。「私はこれが好きなんです」「私はこれができるんです」と、商品を作る。作った本人は、カラオケで歌っている私と同じ状態です。楽しいし、できる。しかし、お客様から見ると、それは他人の歌です。稼げていないコーチほど、ここが分かっていません。お客さんは、あんまりお金を払いたくない。この一点が、抜けているのです。お客様はお金を払いたくない。それでも払うのは、自分の欲しいものが手に入るときだけ。ここで、言葉を定義しておきます。

ビジネスとは、お客様が自分の理想の未来を手に入れるために、あなたにお金を払ってくれる状態を作ることです。あなたの好きなことやできることを、お客様に買ってもらうことではありません。

この定義でいくと、多くの人がやっている「商品作り」は、ビジネスになっていません。自分の資格、自分の経験、自分の得意を並べて、それを商品と呼んでいる。並んでいるのは、全部「自分のこと」です。お客様は、自分のことにしかお金を払わないのに、商品には「あなたのこと」しか書いていない。売れないのは、当然です。売り方が下手なのではなく、売る前の段階で、お客様の興味の外に商品を置いているのです。

なぜ「できること」では売れないのか——できることと、売れることは違う

工具箱の道具を広げて見せる人と、それを見ずに自分の手のカードを見つめるお客様の図

「好きなこと」で稼げないのは分かった。でも「できること」なら、お客様の役に立つのだから売れるはずだ。そう思う人が多いので、ここを分けて書きます。個別相談800人超、セッション6,000時間超の記録の中で、繰り返し出てくる場面があります。「私はこれができます」と言って商品を作る。できるのは、間違いない。実際に、人を変えられる。それでも、売れない。

原則の形で書きます。あるクライアントは、あるテーマを解決する力を、確かに持っていました。私も、その方のコーチングなら、そのテーマは解決できると思いました。しかし、そのテーマに、高い金額を払う人が少なかったのです。解決できることと、それにお金を払う人がいることは、別の話です。できることと、売れることは違う。私がその方に伝えたのは、この一言でした。できることを商品にした時点で、集客が難しくなっていた。能力の問題ではなく、商品の置き場所の問題です。

もう一つ、「できること」で商品を作る人が陥りやすい形があります。「何でも解決できます」という商品です。できることが多い人ほど、これをやります。人間関係も、お金も、健康も、全部相談に乗れます、と。本人は、できることを全部並べたつもりです。しかし、お客様から見ると、何でも解決できるというのは、専門性に乏しい、ということです。自分の困りごとを解決してくれる専門家を探しているときに、「何でもできます」と言われても、自分のことをやってくれる人には見えません。だから、専門家として、小さくする。できることの中から、お客様がお金を払うものだけを残して、そこに絞る。これが、「できること」を「売れること」に変える作業です。

ただし、注意があります。稼げるかどうかは、やってみないと分かりません。商品は小さくしたい。しかし、申し込みが来なくなるほど、固めてはいけない。ある程度は柔軟にしておいて、お客様の反応を見ながら、絞る位置を動かします。「できることを全部並べる」と「一つに固めすぎる」の、間を取るのです。この話は、スキルを増やしても稼げない理由で書いたことと、同じ構造です。あの記事では、スキルは商品とお客様が揃って初めてお金に変わる、と書きました。スキルを増やす人は、能力の側から穴に落ちています。できることを商品にする人は、お客様の側から同じ穴に落ちています。落ちる方向が違うだけで、穴は一つです。

お客様がお金を払うのは「自分のこと」だけ——契約の1回目で完結した経営者の話

12段の階段の設計図を持つ人の横で、1段目に立ったまま旗を手に扉から出て行くお客様の図

「お客様は自分のことにしかお金を払わない」を、私が身をもって知った場面があります。原則の形で書きます。あるクライアントは、経営者の方でした。当時の私の商品は、6か月・12回の設計でした。1回目で現状を整理し、2回目で方向を決め、3回目から手を動かす。6か月かけて段階的に理想の未来へ連れて行く、という設計に、私なりの理想がありました。ところが、その方は、1回目のセッションが終わった時点で、「人生が変わりました」と言って、完結してしまったのです。残りの11回を、必要としなかった。

最初は、私も戸惑いました。こちらには、6か月の設計がある。1回で終わったら、その設計は何だったのか。しかし、その方の側から見れば、話は単純でした。自分の悩みが、1回目で解決した。それで十分だった。こちらの商品設計の理想に、お客様は、まったく興味がなかったのです。お客様が買ったのは、私の設計ではなく、自分の悩みが解決した状態でした。同じような経営者の方は、他にもいます。答えはもう自分の中で決まっていて、私の意見だけを聞きに来る。聞いて、納得して、帰る。それでクレームになったことは、一度もありません。お客様は、自分の欲しいものを手に入れたからです。

この場面が教えてくれたことは、二つあります。一つは、お客様がお金を払っているのは、こちらの理想ではなく、自分の理想の未来だ、ということ。12回の設計は、こちらの理想です。1回で解決した悩みは、お客様の理想です。お金は、後者に払われています。もう一つは、だからこそ、商品の中身は、こちらの「やりたいこと」「できること」で決めてはいけない、ということです。こちらが用意した12回を、お客様は一つずつ味わってはくれません。自分の理想の未来に着いたら、そこで終わりです。それでいい。それが、お客様が自分のことにお金を払っている、ということの意味です。

私は2021年に、コーチングはお客さまに理想の未来を売る仕事と書きました。当時は、理想の未来が大きければ大きいほど高額商品が売れる、という、商品の大きさの話として書いています。いま書き足すなら、その前に一段あります。そもそもお客様は、誰のことにお金を払うのか。自分のことだけです。この前提が抜けたまま「理想の未来を大きく」と言っても、こちらの理想を大きくするだけになります。

「好きなことで食べていく」には順番がある——先に、お客様のためにやる

お客様のために差し出す、コインを受け取る、そのあとに好きなものが並ぶ、の3つの矢印の図

ここまで読むと、「好きなことを仕事に、とよく言われるのに、それは嘘なのか」と思う方がいるかもしれません。嘘ではありません。私は、好きなことで食べていくこと自体を否定していません。否定しているのは、順番です。好きなことを先にやって、あとからお金がついてくる、という順番が、ほぼ無理だと言っているのです。

セッションで、こういう話をしたことがあります。生活するために、お金は一定量、必要です。そこが担保できている人が、その上で好きなことをするなら、いいのです。問題は、担保できていない状態で、好きなことをしようとする場合です。売上が生活ぎりぎりで、それでも好きなことをやろうとする。すると、何が起きるか。自分の好きなことが、「自分のためにやっていること」に変わってしまうのです。自分のためにやっている人は、相手がお金を払いたいかどうか、というところまで、考えが届きません。届かないというより、考えるのが怖い。相手がお金を払わないと分かってしまうと、好きなことを続けられなくなるからです。稼げない人は、ここで、もう一歩を踏み込めません。

逆に言うと、そこが分かれば、道はあります。先に、お客様のためにやる。お客様の理想の未来のために動いて、対価をいただいて、喜んでもらう。ここまで行けば、生活は担保されます。担保された上で、好きなことをすればいい。つまり、好きなことで食べていくというのは、好きなことを売ることではなく、お客様のためにやった結果として、好きなことをする時間とお金が手に入ることです。順番が逆なのです。「自分起点」と「お客様起点」で、同じ場面がどう変わるかを並べておきます。

場面 自分起点(好きなこと・できることから) お客様起点(理想の未来から)
商品を作るとき 自分の資格・経験・得意を並べる。「何でもできます」になりやすい お客様が欲しがっている未来を一つ決め、そこへ連れて行く手順だけを商品にする
体験セッションで話すこと 自分のメソッドの説明。自分がどう変わったかの話 お客様が何をできていないか。それができたら、どこへ行けると思っているか
お客様の反応 「すごいですね」で終わる。他人の歌を聴いた感想 「それが叶うなら、受けたい」。自分のことなので、話が前に進む
お金の動き 払いたくないお客様に、興味のないものを勧めているので、動かない 払いたくないお客様でも、自分の理想の未来のためなら払う
好きなことの位置 先頭に置く。生活が担保されないまま、自分のためにやることになる お客様のためにやった結果として、あとから手に入る

表の右側を見て、「自分のやりたいことを我慢しろ、ということか」と読んだ方がいたら、それも違います。右側の道を通った人は、あとから、やりたいことをやれています。左側の道を通った人は、やりたいことを先頭に置いたまま、生活が担保されず、結局はやりたいことを続けられなくなります。どちらが「好きなことで食べていく」に近いか。順番を守った右側です。

理想の未来を先に聞く——商品は、お客様の答えから作る

耳を大きくして聞く人と、旗の立った丘の吹き出しを話すお客様、その旗を写し取るノートの図

では、実際にどうするのか。私の講座で教えている順番を、原則の形で書きます。やることは、一つだけです。お客様の理想の未来を、先に聞く。それだけです。自分のできることを説明するのではなく、聞く。順番は、こうです。

  • まず、「何を相談したいですか」と聞く。「ビジネスのことです」と返ってきたら、それでは分からないので、次に進む
  • 「ビジネスで、何ができていないですか」と聞く。「集客ができません」と返ってくる
  • 「集客ができたら、稼げると思いますか」と確認する。「思います」と返ってきたら、それが、その方にとっての理想の未来です
  • 「では、集客できるようにしますけど、受けますか」と聞く。これだけです

この順番のどこにも、「私はこれができます」が出てきません。出てくるのは、お客様の言葉だけです。お客様が自分で、困っている内容を言った。それが叶いますよ、行きたいですか、と聞く。自分で言ったことなので、興味がないはずがありません。自分のことだからです。ここで断る人がいるとしたら、理由は、お金の問題だけです。お金が払えない。それは仕方がない。その方には、いまは無理をしなくていい、と伝えて、また別の機会に、となります。

この順番を言葉にすると、こうなります。先に理想の未来を聞く。その中に、困っていること、できていないことを見出す。それを、本人に言わせる。それが叶いますよ、と伝える。それが解決して理想の未来に行けると分かったら、受けます、となる。この流れは、当たり前のことをやっているだけです。当たり前なのに、多くの人がやらないのは、聞く前に、自分のできることを話してしまうからです。話した瞬間に、お客様は「他人の歌」を聴く側に回ります。

そして、この順番で商品を作ると、時代の変化にも耐えます。理想の未来を売るで書いたとおり、悩みを解決する方法は、生成AIが無料で教えてくれる時代になりました。「できること」を売っている人は、AIと同じ土俵に立つことになります。しかし、お客様が自分の理想の未来に着くまで連れて行く、という仕事は、まだ残っています。どこで躓くかは、AIには分からないからです。理想の未来を先に聞いて、そこへ連れて行く。この形の商品だけが、しばらく残ります。

ここで、前回の記事とつながります。前回、まず自分がゴールに行くと決める、と書きました。決めたゴールの中身を、何で埋めるか。自分の好きなこと、できることで埋めると、決めていても着きません。お客様が興味を持たない道だからです。お客様の理想の未来で埋める。そうすれば、決めたゴールと、お客様がお金を払う場所が、同じ方向を向きます。行くと決めることと、何で稼ぐかを決めること。この二つが揃って、初めて、決めたゴールに着く道になります。

まとめます。好きなことや、できることで稼ぐのは、ほぼ無理です。お客様は、あなたの好きなことにも、できることにも興味がなく、興味のないことにはお金を払わないからです。お客様がお金を払うのは、自分のことだけ。だから、お客様の理想の未来が手に入るとしたら、お金を払ってくれる。そこで初めて、ビジネスになります。できることと売れることは違うので、できることの中から、お客様がお金を払うものだけを残して、専門家として小さくする。ただし、固めすぎない。好きなことで食べていくには順番があり、先にお客様のためにやって対価をいただき、その結果として好きなことをする時間とお金が手に入ります。やることは一つ、お客様の理想の未来を先に聞くこと。もしいま、商品の説明文に「私は」が並んでいるなら、一度、消してみてください。残るのが、お客様の理想の未来です。そこから、商品を作り直せます。

よくある質問

好きなことを仕事にしたくてコーチになりました。諦めたほうがいいのでしょうか。

諦める必要はありません。順番を変えるだけです。好きなことを先頭に置いて、あとからお金がついてくる、という順番が、ほぼ無理だと言っています。先にお客様の理想の未来のために動いて、対価をいただき、生活を担保する。その上で、好きなことをすればいい。順番を守った人のほうが、結果的に、好きなことをやれる時間もお金も手に入っています。好きなことを売るのではなく、好きなことをする状態を、お客様のためにやった結果として手に入れる、と考えてください。

自分にできることが多すぎて、どれを商品にすればいいか分かりません。

できることの多さで選ぶと、決まりません。基準は、そのテーマに、お客様が高い金額を払うかどうかです。できることと、売れることは違います。できることの中から、お客様がお金を払うものだけを残して、専門家として小さくしてください。「何でもできます」は、お客様から見ると専門性に乏しく、自分のことをやってくれる人には見えません。ただし、稼げるかどうかはやってみないと分からないので、申し込みが来なくなるほど固めず、反応を見ながら絞る位置を動かしてください。

お客様の理想の未来が、お金や集客ではない場合はどうすればいいですか。

理想の未来は、お金や集客に限りません。大事なのは、お客様が自分の言葉で「それが叶うなら受けたい」と言える未来かどうかです。聞き方は同じで、何ができていないかを聞き、それができたらどこへ行けると思っているかを確認します。お客様が自分で言った未来なら、テーマが何であれ、自分のことなので興味を持ちます。逆に、こちらが「あなたに必要なのはこれです」と決めた未来は、どれだけ正しくても、他人の歌になります。

理想の未来を聞いても、お客様がうまく答えられません。

いきなり「理想の未来は何ですか」と聞くと、多くの人は答えられません。だから、順番があります。まず「何を相談したいですか」、次に「何ができていないですか」と、困っていることから聞きます。困っていることなら、ほとんどの人が答えられます。そのあとで「それができたら、どうなると思いますか」と確認すると、理想の未来が、お客様自身の言葉で出てきます。理想の未来を先に聞くというのは、抽象的な夢を聞くことではなく、困っていることの先にある状態を、本人に言わせることです。

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この記事を書いた人

株式会社マインドコーチ 代表取締役 安達慎一

集客やセールスが苦手な稼げないコーチの方向けに、コーチングビジネスの基本を教えています。起業家を育成しています。

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