コーチングの資格は書いた。学んだ講座や会社での経歴も並べた。それでもプロフィールを読み返すと、「結局、何を相談できる人なのか」が自分でもはっきりしない。
そんなとき、さらに目立つ肩書きや資格が必要だと思っていないでしょうか。
副業でコーチングを提供する人のプロフィールは、経歴の長さを競うための文章ではありません。どんな状況の人を支援し、なぜそのテーマに関わり、何を一緒に考えられるのかを伝える文章です。本業の経験は、その説明の材料になります。
ただし、会社での経験を、そのままコーチングの支援実績に置き換えてよいわけではありません。経験したことと、提供できる支援を分けて書く。そのうえで、読者が相談する場面を想像できる形につなげます。今回は、この順番でプロフィールを整理する方法をお伝えします。
プロフィールの主役は、経歴ではなく「誰の何を支援するか」

「会社員として二十年勤務。管理職を経験。コーチングを学び、現在は副業で活動中」。これは経歴の書き方の例です。事実が書かれていても、この情報だけでは、読者は自分の相談とどう関係するのか判断しにくいかもしれません。
仕事の方向性を考えたいのか、部下との面談を整理したいのか、複数の役割を抱えて優先順位に迷っているのか。同じ会社員でも、相談したい内容は違います。
まず冒頭に、「どんな状況の方と、何を整理するのか」を置いてみてください。例えば、初めてチームを任され、仕事の任せ方に迷う人と、日々の関わり方を考える。あるいは、仕事と家庭の予定が重なり、自分の目標を後回しにしている人と、取り組む順番を整理する。これらは対象と支援テーマの仮の例です。
先に相談の入口が見えると、その後に書かれた経歴を「このテーマに関わってきた人なのだ」と読めます。経歴が消えるのではなく、読む理由が生まれるのです。
逆に、誰でも支援できますと広げすぎると、どんな経験を載せるべきかも決まりません。最初から一生変えない専門分野を決める必要はありませんが、今の自分が責任を持って扱うテーマは絞ってください。
本業の経験は、役職名より「してきたこと」で見る

自分の経験を整理するとき、会社名や役職名から書き始めると、目立つ経歴がない人ほど手が止まりがちです。しかし、相談相手に伝えられる材料は、肩書きだけではありません。
例えば、初めて担当する仕事の進め方を整理したこと。関係者の意見が違う中で、確認する順番を工夫したこと。後輩から相談を受け、一緒に選択肢を考えたこと。表彰された出来事ではなくても、自分が何を考え、どう動いたかを振り返れます。
ここでは、まず三つの出来事を選んでください。それぞれについて、当時どんな状況だったか、自分は何をしたか、どこまで変わったかを書きます。うまくいった話だけでなく、途中で方法を変えた経験も材料になります。
大切なのは、出来事を大きく見せることではありません。「人の成長を支えてきました」よりも、「相談内容を整理し、本人が選べるように複数の進め方を一緒に考えました」の方が、関わり方は具体的です。もちろん、実際にそのように関わった場合に限ります。
会社全体の成果を自分一人の成果として書かないことも大切です。チームで取り組んだことなら、自分が担当した部分を分けます。自分の役割を正確に説明できることは、派手な数字を載せることとは別の信頼の材料になります。
経験、学習、支援実績を混ぜない

プロフィールを強く見せようとすると、別の種類の経験が一つの実績にまとめられてしまうことがあります。ここは丁寧に分けてください。
会社で人の相談に乗った経験は、本業での経験です。コーチングの講座で練習した時間は、学習や練習の経験です。お客様にサービスを提供した経験は、その条件に応じた支援実績です。どれも書く材料にはなりますが、同じものではありません。
例えば、社内で行った面談を、説明なしにすべて「コーチングの顧客数」に数えると、読者は有料のお客様への提供実績だと受け取るかもしれません。人数を載せるなら、何の人数なのかが分かるようにします。
資格も、正式な名称と取得状況を事実どおりに書きます。受講中であれば受講中、修了であれば修了です。資格があることと、ある分野で結果を出したことを、同じ意味で扱わないようにしてください。
有料の支援経験がまだ少ないなら、少ない状態から説明を作ればよいのです。実績の欄を埋めるために、練習相手の感想をお客様の成果として載せる必要はありません。
私は、「実績がないから何も書けない」と考えることと、「実績がなくても何を言ってもよい」と考えることの、どちらにも偏る必要はないと思っています。今ある経験を正確に示し、現在提供できることを具体的に伝える。その二つを両立させます。
自分が乗り越えたことと、相手を支援できることの間を見る

「自分も同じことで悩んだから、気持ちが分かる」。これは相談を始めるきっかけにはなります。しかし、自分が乗り越えた経験だけで、相手も同じように変われるとは限りません。
職場の状況、家族との関係、使える時間、本人が望むことは違います。自分に合った方法を教えるだけで十分なのか、その人に合わせて考える必要があるのかを見極めます。
例えば、自分は毎朝の時間を使って学び直せたとしても、小さな子どもの世話をしている人に同じ時間の使い方を勧めればよいとは限りません。役立つのは、「早起きすれば解決する」という結論ではなく、その人の条件を確認し、実行できる方法を一緒に考える関わり方かもしれません。
そのため、プロフィールにも「私と同じ結果にします」と書くより、どんな検討を支援するのかを書きます。経験は、相手の話を理解する手がかりとして使う。自分の正解に相手を合わせるためには使わない。その違いを意識してください。
自分が経験していないテーマや、対応できない領域まで広げる必要もありません。必要な学習や経験を積むことと、今提供する範囲を明らかにすることは、並行して進められます。
仮の例:経歴の羅列を、相談の入口へ書き換える

ここからは、書き方を示すための仮の例です。実際のコーチや受講者のプロフィールではありません。
会社員としてチーム運営に関わり、コーチングを学んだ人がいるとします。元の文章は、「管理職経験十年。コミュニケーションを学び、コーチとして活動しています。あなたの可能性を引き出します」というものでした。
この文章では、管理職として何をしてきたのか、どんな人が相談できるのかが分かりにくいままです。そこで、事実として説明できる経験と、現在の支援内容を分けて考えます。
書き換えの例はこうです。「初めてチームを任され、メンバーへの仕事の任せ方に迷っている方へ。面談で何を確認するか、日々の関わり方をどう変えるかを一緒に整理します。会社員としてチーム運営に携わる中で、自分で抱え込むことと人に任せることの違いを考えてきました。その経験を背景に、現在は対話を通じた整理を支援しています」。
この例の狙いは、華やかな言葉を増やすことではありません。対象、相談内容、背景の経験をつなげることです。実際に使うなら、自分が経験していない内容や提供していない支援を残さず、事実に合わせて書き直してください。
また、この文章だけで商品の説明が完了するわけではありません。面談の方法、期間、費用などは、サービス案内で別に示す必要があります。プロフィールは、何を相談できそうかを知ってもらう入口です。
資格や理念は、読者の判断を助ける位置に置く

学んだことや活動への思いを消す必要はありません。ただし、読み手が知りたいことより先に、長い経歴や理念が続いていないかを確認してください。
「自分らしく生きる人を増やしたい」という思いがあるなら、そのために今どんな人と、何を扱っているのかを添えます。理念と具体的な支援がつながると、言葉の意味を受け取りやすくなります。
資格は、支援の背景にある学習を示す位置に置けます。略称だけで通じにくい場合は、何を学んだものなのかを簡潔に説明します。ただし、その資格の範囲を超える能力の証明として使わないことです。
長いプロフィールなら、冒頭に短い紹介、その後に支援テーマ、関連する経験、学習歴、活動への思いという順番も考えられます。順番に唯一の正解はありません。最初の数行で「自分の相談と関係がありそうか」が分かるかを基準にしてください。
資格名や会社名を隠せばよいという話でもありません。正確な経歴は大切な情報です。それを、読者が意味を理解できる場所と分量で伝えるということです。
本業の経験を出すときは、公開できる範囲を選ぶ

会社での経験には、自分だけの判断で公開してよいとは限らない情報が含まれます。プロフィールの説得力を高めるために、職場の内部事情や他人の相談内容を細かく載せる必要はありません。
例えば、部署、時期、役職、出来事を組み合わせると、名前を書かなくても誰の話か分かることがあります。具体性を出すことと、他人の事情を詳しく書くことを同じにしないでください。
自分が学んだことや、担当した役割を、公開できる範囲で説明します。会社の実績や資料を使いたいときは、使えるかを確認してからにします。会社があなたの個人サービスを推奨しているように見える表現にも注意が必要です。
公開できる情報が少なくても、「どんな状況で、どのように考えたか」を一般化して書ける場合があります。ただし、一般化した例を、実際のお客様の成果のように見せないことです。
強いプロフィールを作ることより、安心して相談できる説明を作ることを優先してください。実話を載せなければ伝わらないわけではありません。
読み手に「何を相談できる人か」を聞いてみる

書き上がったら、「よい文章になったか」だけで判断せず、対象に近い人に読んでもらう方法があります。感想をお願いする場合は、無理に時間を取ってもらわず、短い範囲で構いません。
聞きたいのは、「何を相談できる人だと思いましたか」「どんな状況の人に向いていると感じましたか」ということです。「信頼できそうですよね」と答えを誘導しないようにします。
もし、自分が意図した内容と違う答えが返ってきたら、言葉を足す前に、主題がぼやけていないかを見ます。仕事の相談も人生全般も人間関係も全部並べたために、読み手が選べなくなっているのかもしれません。
反対に、対象と支援内容は伝わっているのに、申込みがないこともあります。その場合、プロフィールだけが原因とは限りません。サービスの中身や条件、そもそも誰に読まれているかも関係します。一つの文章を直せば必ず契約につながる、とは考えないことです。
まずは冒頭の三文から整えます。誰に向けているか、何を支援するか、そのテーマに関わる背景は何か。この三つが言えれば、プロフィール全体の軸ができます。
自分の価値を大きく見せるより、役立つ場面を伝える

他のコーチと比べて、資格も実績も足りないと感じることはあるでしょう。しかし、比較する相手を増やし続けても、自分が誰に何を提供するのかは決まりません。
本業の中で積んできた経験を、いったん具体的な出来事に戻してみてください。その中から、今の支援につながるものを選び、相手にどんな場面で役立つのかを考えます。
大切なのは、「自分には価値がある」と言い聞かせるだけで終わらず、その価値を相手が判断できる説明にすることです。考え方の見直しと、支援内容を形にする作業の両方が必要になります。
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