セッションが終わり、「よかったです」「話せてすっきりしました」と感想をもらう。うれしい言葉ですが、それだけでは、何が役に立ち、次に何を変えればよいのかまでは分かりません。
会社の仕事と両立しながらコーチングを提供しているなら、一回の支援から得られる情報を大切にしたいところです。面談の回数を増やす前に、お客様の受け止め方を確かめる方法があります。
セッション後のアンケートでは、相談前の状況、役に立った関わり、分かりにくかった点、まだ残っていること、次に試したいことを聞きます。満足したかだけでなく、支援の中身を振り返れる問いにするのです。
今回は、副業コーチが使いやすい五つの質問と、回答を改善につなげる読み方を紹介します。ここで扱うのは、提供後の振り返りです。見込み客を選ぶための登録時アンケートとは、目的を分けて考えてください。
「よい感想」と「改善に使える回答」は同じではない

よい感想をもらうと、自分の支援に自信を持てるかもしれません。一方で、感想を褒め言葉として受け取るだけでは、次も同じように支援できるとは限りません。
例えば、「安心して話せました」という回答があったとします。その安心につながったのは、話を遮らずに聞いたことなのか、最初に進め方を説明したことなのか。あるいは、今回は身近な人に話せないことを話せた、という意味なのかもしれません。
同じ言葉でも、その背景が違えば、残したい関わり方も変わります。自分に都合のよい理由を当てはめる前に、具体的な場面を聞く意味があります。
また、気持ちが軽くなったことと、目指していた変化が起きたことも分けて見ます。気持ちが整理されたこと自体に価値がある場合はありますが、それをそのまま仕事の成果や売上の変化として表すことはできません。
アンケートは、評価を高く見せるための道具ではありません。こちらが提供したつもりの支援と、相手が受け取った支援を近づけるための対話の材料です。
最初に、回答の目的と扱いを伝える

質問を並べる前に、何のために回答してもらうのかを短く伝えます。「今後の支援を改善するため、ご感想をお聞かせください。答えにくい項目は空欄で構いません」という案内が一例です。
お客様が回答にかける時間も考えてください。仕事の後にセッションを受けた人へ、さらに長い作文を求めると負担になることがあります。まずは短い回答でも使える設計にして、詳しく聞く必要があるときに相談します。
本音を知りたいなら、否定的な意見も書けるようにします。「どれほどよかったですか」だけを聞くより、分かりにくかったことや、期待と違ったことも尋ねる方が、改善する場所を確かめられます。
その回答をブログやサービス案内に載せたい場合は、改善のための回答と、公開への同意を分けてください。アンケートに答えたことを、宣伝に使ってよいという意味にしないことです。
まずは自分の運営上の約束として、回答は支援の振り返りに使い、公開をお願いするときは別に確認する、と決めておく方法があります。後で説明と対応が食い違わないように、自分が守れる扱いを伝えてください。
質問一:相談前、どんな場面で困っていましたか

最初の質問は、「今回のセッション前、どんな場面で困っていましたか」です。すでに面談で聞いていても、お客様自身の言葉で残してもらう意味があります。
こちらは仕事の優先順位の相談だと捉えていても、本人は「頼まれると断れず、予定を守れないこと」を問題にしているかもしれません。テーマの見出しだけでは見えなかった、具体的な困りごとが分かります。
ただし、相談内容を最初からすべて書き直してもらう必要はありません。「差し支えない範囲で、一つの場面を教えてください」と添える方法もあります。会社名や関係者の名前など、改善に不要な情報は求めないようにします。
この回答は、商品案内にどんな言葉を使うかを考える材料にもなります。ただし、一人の言葉をそのまま全員の悩みだと決めつけないでください。複数の回答や普段の相談と照らし合わせて、自分が扱うテーマを確かめます。
質問二:役に立った場面や関わりはありましたか

二つ目は、「今回、役に立った場面や関わりがあれば教えてください。特になければ、そのようにお書きください」です。よい答えがあることを前提にしない聞き方にします。
「質問がよかったです」と返ってきた場合、そのままでも一つの回答ですが、具体的な場面まで分かれば振り返りやすくなります。「選択肢を二つに分けたところ」「最後に次の行動を言葉にしたところ」など、どこで整理が進んだのかを見るのです。
ここでは、自分が一番うまくできたと思った場面を選んでもらう必要はありません。準備した問いより、何気なく確認した言葉が役に立っている場合もあるでしょう。
コーチ側の自己評価と相手の受け止め方が違っていても、それは失敗とは限りません。何を残し、何を見直すかを考える材料が増えたということです。
次のセッションでは、役に立った形を参考にしつつ、相手や状況に合わせて使います。同じ質問をすれば誰でも同じ変化が起きる、とまでは考えないでください。
質問三:分かりにくかったことや、期待と違ったことはありますか

三つ目は、「説明や進め方で分かりにくかったこと、期待と違ったことはありましたか」です。ここは、答えを受け取る側の姿勢も問われます。
「もっと具体的な助言をもらえると思っていました」という回答があれば、すぐに「コーチングを理解していない人だ」と片づけないでください。案内文や開始時の説明で、何を期待してもらう伝え方になっていたかを確認できます。
逆に、こちらが助言を多くしたのに、相手は考えを整理する時間を求めていた、ということも考えられます。どちらかの方法が常に正しいのではなく、今回の支援の目的と期待が合っていたかを見るのです。
回答を読んで不快になったときは、その場で言い返さず、事実を確認してから返事をします。必要なら、受け止めたことを伝え、詳しく確認してよいか尋ねます。
ただし、相手の希望をすべて商品に加える必要はありません。対応できる範囲や支援の目的と照らし合わせ、改善することと、含まれないと説明することを分けて判断します。
質問四:整理できたことと、まだ残っていることは何ですか

四つ目は、「今回整理できたことと、まだ残っていることを教えてください」です。「悩みは解決しましたか」だけでは、一部が整理された状態を表しにくいことがあります。
例えば、誰に相談するかは決まったけれど、何を伝えるかはまだ迷っている。優先順位は見えたけれど、実行する時間は確保できていない。こうした途中の状態が分かれば、支援を振り返る手がかりになります。
ここで、残っていることをすべて継続契約の理由に変えようとしないでください。本人が自分で進められることもあれば、今回の支援の範囲外のこともあります。残ったものを整理することと、その場で売ることは別です。
また、「何も変わっていない」という回答も、そのまま受け止めます。こちらが変化を感じていても、本人がそう感じていないなら、その違いを確かめる必要があります。よい結果になるまで回答を書き直してもらうものではありません。
質問五:次に試したいことはありますか

最後は、「今回の話を踏まえて、次に試したいことはありますか。まだ決まっていなければ、そのままお書きください」です。
これは、必ず行動目標を宣言してもらうためではありません。話した内容が、本人の日常へどうつながっているかを知るためです。話すことで整理できたので、いったん考える時間を取りたい、という答えもあり得ます。
何か試したいことが出てきたら、実行する前の意思と、実行した後の結果を分けて記録します。「上司に相談してみたい」は意向であって、「上司との関係が改善した」という成果ではありません。
後日確認する予定がある場合は、そのときに実際に何が起きたかを聞けます。予定がない場合は、勝手に追跡の連絡を増やさず、必要に応じて本人と相談してください。
セッション直後のアンケートですべての成果を測ろうとしないことです。直後に分かることと、時間が経ってから分かることには違いがあります。
仮の例:「満足でした」の先から見えた改善点

ここからは、回答の読み方を示す仮の例です。実際のお客様の感想や成功事例ではありません。
会社員として働きながらコーチングを提供する人が、仕事の進め方に悩む方へセッションを行ったとします。口頭の感想は「満足でした」でした。
五つの質問に答えてもらうと、困っていたのは急な依頼を全部引き受けてしまうこと、役に立ったのは引き受ける前に確認する条件を整理したことだと分かりました。一方、最後に説明された課題の意味が分かりにくかったという回答もありました。
この場合、残したいのは、依頼を引き受ける判断を具体化した関わりです。見直したいのは、課題の説明です。質問の技術を一から学び直す前に、課題の目的と取り組み方を、相手が理解できる言葉で伝えていたかを確認できます。
次回は、課題を伝えた後に、どんな取り組みとして受け取ったかを相手の言葉で確認する方法を試せます。ただし、この変更で成果が出たとまでは言っていません。改善する場所が具体的になった、という例です。
「満足だった」という全体の評価と、「説明が分かりにくかった」という部分の指摘は両立します。よい評価だから改善不要、悪い指摘があるから全部だめ、という二択で読まないことが大切です。
回答を読んだら、残すことと変えることを分ける

アンケートは集めただけでは支援を変えません。読むときには、残したい関わり、改善する点、まだ判断できない点に分けてみてください。
毎回一つずつでも、次にどうするかを書いておきます。例えば、進め方の説明を短くする、課題の例を一つ添える、相手が使った言葉を確認してから話を進める、といった変更です。
複数の回答で同じ指摘が続くなら、個別の面談だけでなく、案内文や商品の設計を見直す必要があるかもしれません。毎回「思っていた内容と違った」と言われるなら、セッション中の技術だけを直しても、期待のずれは残ります。
ただし、回答しなかった人の意見は分かりません。少数の回答を「お客様全員が満足」とまとめたり、声の大きい一人の希望だけで全体を変えたりしないようにします。
厳しい意見を読んで「自分には向いていない」と結論づける前に、具体的に直せるところを見てください。私は、お客様の言葉を自分への採点ではなく、仕事を改善する材料として扱うことも、ビジネスマインドの一つだと考えています。
「お客様の声」として公開する前に確認すること

回答を紹介したい場合は、どの文章を、どの場所で、どんな名前の表示で使うのかを本人に確認します。ブログへの掲載と広告への利用では見られ方も違うので、ひとまとめにしない方が話し合いやすくなります。
文章を短くする場合も、意味が変わっていないかを見ます。「まだ実行していませんが、考えが整理されました」の前半を消して、実行後の成果のように見せないことです。本人の感想を、支援すれば誰でも得られる結果として書き換えることも避けます。
手書きの回答なら必ず信頼される、というわけでもありません。画像には氏名や筆跡、相談内容などが含まれます。見せる必要のない部分まで公開せず、実際の掲載案を確認してもらうことが大切です。
公開を断られたら、その意思を尊重します。掲載できなくても、改善の参考として回答をもらえた価値は残ります。褒め言葉を集めることを優先して、相談しやすい関係を損なわないでください。
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