コーチングは怪しいのか——中で15年見てきた人間が、構造から答えます

コーチングは怪しいのか。この業界の中で15年やってきた人間として、正面から答えます。まず、あなたが「怪しい」と感じているなら、その直感を否定するつもりはありません。この業界には、外から怪しく見える構造が実際にあり、あなたの警戒心は多くの場面で正しく働いているからです。同時に、コーチングというサービスそのものは、対話を通じて人の行動を支援する、まっとうな仕事でもあります。この記事では、業界が怪しく見える4つの構造を中の人間として率直に説明したうえで、怪しいものとそうでないものを契約前に見分ける実務までお伝えします。警戒したまま、読み進めてください。

目次

「怪しい」という直感は、正しく働いている場面がある

半開きの扉の前で立ち止まり、中を慎重にのぞき込む人の図——警戒は正常なセンサー

「コーチング 怪しい」「コーチング 詐欺」。そう検索してこの記事にたどり着いたことを、後ろめたく思う必要はまったくありません。むしろ、その検索は健全です。中身のよく見えない高額なサービスを前にして、財布を開く前に疑う。それは、あなたを守るセンサーが正常に動いているということです。危ないのは、警戒しない人のほうです。

先に、私の立場を明かしておきます。私はビジネスコーチです。つまり、あなたが今まさに警戒している「怪しいと思われる側」の人間です。この仕事を15年続けてきて、初対面の場で職業を告げた瞬間の、あの少し引いた空気を何度も味わってきました。「家族にコーチングを習うと言ったら反対された」というクライアントの話も、数えきれないほど聞いてきました。だからこの記事は、あなたの警戒心を解いてもらうためには書きません。警戒心を、感情のままにしておくのではなく、確かめる道具として使えるようにするために書きます。

土台として、言葉の定義を確認しておきます。

コーチングとは、対話を通じて、クライアントが自分の目標を明確にし、そこへ向かう行動を続けられるように支援するサービスのことです。

定義だけを読めば、怪しい要素はどこにもありません。人材育成の手法として、企業の研修に取り入れられている程度には、実務の蓄積がある仕事です。問題は、定義ではありません。このサービスが売られている現場の構造にあります。私はこれまで、個別相談800人超・セッション6,000時間超の記録を積み重ねてきましたが、相談に来られた方の中には、「以前、高額な講座で嫌な思いをした」「コーチングに興味はあったが、怖くて何年も踏み出せなかった」という方が大勢いました。その方たちの警戒には、ちゃんと理由があったのです。次の章で、その理由を構造として説明します。

コーチングが怪しく見える4つの構造——中の人間として率直に説明します

大きな値札だけが付いた、中身の見えない閉じた箱の図——高額なのに中身が事前に見えない構造

ここからは、業界への弁明ではなく、構造の説明をします。私は、コーチング業界が外から怪しく見えるのは、当然だと思っています。理由は大きく4つあります。

怪しく見える構造 何が起きているか
① 高額なのに、中身が事前に見えない 数十万円の講座や契約でも、買う前に品質を確かめる手段がほとんどない。試着も試食もできない買い物になっている
② 「コーチがコーチに売る」閉じた再生産構造 コーチになるための講座を買った人が、今度はコーチになるための講座を売る側に回る。業界の外からお金が入ってこない循環が、一部に存在する
③ 資格が乱立し、参入障壁が低い 名乗るのに国家資格は要らず、団体ごとに独自の資格が発行されている。実力のある人も、そうでない人も、同じ肩書きで並んでしまう
④ 成果の定義が曖昧になりやすい 「気づきが得られた」で終わることもできてしまうため、何をもって成果とするかが契約の前に決まっていないことが多い

とくに説明が必要なのは、②でしょう。コーチングがマルチ商法に似ていると言われるのは、主にこの構造のせいです。私は2019年にもコーチングってマルチ商法でしょうか?という記事で、この質問に正面から答えました。仕組みとしては、コーチングは商品を連鎖的に販売させる仕組みではなく、マルチ商法とは別物です。ただし、「稼ぎ方を教える講座で学んだだけの人が、稼ぎ方を教える講座を売る」という循環が起きている場面があるのは事実で、これは外から見れば、講座が講座を生む閉じた輪にしか見えません。中身が別物でも、見た目が似てしまう瞬間がある。区別がつかないものは、怪しく見えて当然です。

④も根が深い構造です。コーチングの成果は、売上のような数字で測れるものばかりではありません。だからこそ、成果の定義を曖昧なままにしておくことも「できてしまう」のです。成果が定義されていなければ、効果があったのかなかったのかを、誰も検証できません。検証できない場所では、「受けてよかった」という満足の言葉だけが実績として流通します。誠実にやっている人と、そうでない人の差が、外から見えなくなるのです。

この4つは、どれも特定の誰かの悪意というより、業界の作りの問題です。そして、作りの問題である以上、「良い人もいますよ」という反論では解決しません。必要なのは、構造を知ったうえで、一件ずつ見分けることです。

では、詐欺なのか——「サービスの中身」と「売り方」を分けて考える

天秤の左右の皿に箱の中身と拡声器が別々に載る図——サービスの中身と売り方を分けて見る

「コーチングは詐欺なのか」という問いに、私の答えを書きます。コーチングというサービスそのものは、詐欺ではありません。対話によって人の目標達成を支援するという中身は、まっとうな仕事として成立します。私自身、クライアントの人生が実際に変わっていく現場に、15年立ち会ってきました。

ただし、この問いは、問いの立て方そのものを変えたほうが、あなたの役に立ちます。「コーチング全体が詐欺かどうか」を議論しても、目の前の1件を判断できるようにはならないからです。分けるべきは、サービスの中身と、売り方です。どんなにまっとうなサービスにも、怪しい売り方をする人は現れます。逆に、地味でも誠実な売り方をしている人もいます。包丁と同じです。道具そのものの善悪を議論するより、目の前の使われ方を見るほうが、あなたの安全には直結します。

怪しい売り方には、中身と関係なく共通するパターンがあります。誰にでも効くと言う。成果を約束する。考える時間を与えない。高揚感の中で契約を迫る。こうした売り方をされたら、そのサービスの中身がどうであれ、警戒してください。一方で、中身のあるサービスを誠実に売っている人は、その逆をやります。事前に実物を見せ、できないことを先に言い、考える時間を歓迎します。

私は2019年にもコーチングって詐欺?という記事で、同じ問いに答えています。7年経ちましたが、答えは変わっていません。そして、個別の契約が法的にどうなのかを判定するのは、私の仕事ではありません。私にできるのは、中の人間として、怪しい売り方のパターンと、契約前にそれを見抜く方法をお伝えすることです。次の章が、この記事の実務です。

契約前にできる見分け方——4つの確認

虫眼鏡を手にチェックリストを一項目ずつ確かめる人の図——契約前の4つの確認

コーチングを受けるにせよ、学ぶにせよ、契約前にできる確認は、次の4つです。

  • 確認① 実物と実績を確かめる——その人が書いたもの・話したもの(ブログ、動画、メルマガ)が、確かめられる量で存在するか。実績が「クライアントに何が起きたか」で語られているか。自分の売上の話だけが実績になっている人は、教えているのは「講座の売り方」かもしれません
  • 確認② 「誰でも」「絶対」を言っていないか——成果を断言・保証する言葉を使っていないか。コーチングの成果は、受ける側の行動に大きく懸かっています。それを知っている誠実なコーチほど、「絶対」とは言えないのです
  • 確認③ 契約前に「成果の定義」を確認する——「この契約では、何がどうなったら成果なのですか」と、契約前に文章で確認する。明確な答えが返ってくるか、曖昧なまま高揚する話にすり替わるかで、④の構造(成果の曖昧さ)をその場で検査できます
  • 確認④ 迷わせて、焦らせる売り方をしていないか——「今日中に決めてください」「この場で決められない人は変われません」。考える時間を奪う売り方は、比較検討されたら困るという自己申告です。持ち帰りを歓迎するかどうかを見てください

4つに共通する原則は、ひとつです。言葉ではなく、確かめられるものを見る。熱意や人柄の印象は、その場の空気でいくらでも作れます。しかし、実物の量、実績の語り方、成果の定義、そして時間を与えるかどうかは、その場で取り繕えません。うまい話ほど、確かめられるものが少ない。この原則は昔から変わらず、とても怪しいお金の増やし方という記事でも、別の角度から同じことを書いています。

そして、覚えておいてほしいことがあります。この4つの確認は、誠実にやっているコーチにとっては、嫌がらせではなく歓迎すべき質問だということです。私自身、契約前に厳しく質問してくださる方ほど、契約後の取り組みが真剣です。あなたの確認を面倒がるか、喜ぶか。その反応自体が、5つ目の試金石になります。

警戒心は、解かなくていい——持ったまま確かめればいい

盾を構えたまま、もう片方の手で握手を差し出す人の図——警戒したまま確かめればいい

ここまで読んで、「結局、警戒は必要なのか、不要なのか」と思われたかもしれません。答えははっきりしています。警戒は、必要です。解かなくていい。ただし、警戒したまま立ち止まり続けるのではなく、警戒したまま、前の章の4つを確かめてください。感情としての警戒は人を止めるだけですが、確認の手順に変えた警戒は、あなたに良い選択をさせます。コーチングは、良い出会い方をすれば人生の進み方を変えるサービスであり、同時に、高額な買い物です。高額な買い物として、堂々と目利きをすればいいのです。

それから、この記事を読んでいる方の中には、コーチングを受ける側ではなく、これから学んで仕事にしようとしている方もいるはずです。その方に、中の人間として伝えたいことがあります。あなたがコーチを名乗った瞬間から、この「怪しく見える構造」は、あなた自身の問題になります。あなたがどれだけ誠実でも、業界の構造があなたを怪しく見せるのです。だから、誠実であるだけでは足りません。誠実さを、外から確かめられる形にしてください。実物を出す。実績をクライアントの変化で語る。成果の定義を契約前に自分から示す。焦らせて売らない。それは自分の首を絞めることではなく、警戒しているまともなお客様に、あなただけが見つけてもらう方法です。そして、そういうコーチが一人増えるごとに、この業界の怪しさは一件ずつ減っていきます。

まとめます。コーチングというサービスそのものは、怪しいものではありません。しかし、業界には怪しく見える4つの構造——高額なのに中身が見えない、コーチがコーチに売る閉じた循環、資格の乱立、成果の曖昧さ——が実際にあり、あなたの警戒心は正しく働いています。だから、警戒心は捨てずに、道具に変えてください。実物と実績を確かめる。「誰でも」「絶対」を言う人を避ける。成果の定義を契約前に確認する。焦らせる売り方から離れる。この4つを確かめて残ったものが、あなたにとっての、怪しくないコーチングです。

よくある質問

コーチングはマルチ商法なのですか?

仕組みとしては別物です。マルチ商法は商品を買った人が販売員となって次の買い手を勧誘する連鎖の仕組みですが、コーチング自体にその仕組みはありません。ただし、「コーチ養成講座を買った人が、コーチ養成講座を売る側に回る」という閉じた循環が一部にあり、これが外からマルチ商法のように見える原因になっています。見るべきはお金の流れです。その人が、業界の外にいるお客様に価値を届けて対価を得ているなら、健全な事業です。

高額であること自体が、怪しさの証拠になりますか?

なりません。コーチングは長期間の伴走に対する対価なので、価格が高くなること自体には理由があります。安ければ安全というものでもありません。危険信号は、価格そのものではなく、組み合わせです。高額であることに加えて、成果の定義が曖昧で、考える時間を与えずに契約を迫ってくる。この組み合わせが揃ったときは、金額の大小にかかわらず、いったん離れてください。

資格を持っているコーチなら安心ですか?

資格は、その団体の課程を修了したという学習の証明にはなりますが、安心の根拠としては弱いです。コーチングの資格は国家資格ではなく、団体ごとに基準の異なる民間資格が数多く発行されています。資格の有無よりも、本文に書いた4つの確認——とくに、実物と実績、そして成果の定義——のほうが、はるかに多くのことを教えてくれます。資格を「持っていること」ではなく、その人が「何をしてきたか」を見てください。

「絶対に稼げる」「誰でも変われる」と言われました。信じていいですか?

その言葉自体が、この記事で挙げた中で最大の危険信号です。コーチングの成果は、受ける側の行動に大きく懸かっており、それを誠実に理解している人ほど「絶対」という言葉は使えなくなります。成果を断言する人は、誠実さか理解か、そのどちらかが欠けています。どちらが欠けていても、あなたの大切なお金を預ける相手ではありません。

怪しいかどうかは、体験セッションで見抜けますか?

かなりの部分は見抜けます。見るポイントは2つです。1つ目は、その時間があなたの課題を扱う場になっているか、それとも契約を迫るための場になっているか。2つ目は、終わったあとに考える時間を歓迎するかどうかです。体験の中身が薄いのに高揚感だけが残る、その場で決めるよう促される、と感じたら、それが答えです。逆に、体験の時間だけでも持ち帰れるものがあったなら、それはサービスの実物を先に見せてくれたということです。

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この記事を書いた人

株式会社マインドコーチ 代表取締役 安達慎一

集客やセールスが苦手な稼げないコーチの方向けに、コーチングビジネスの基本を教えています。起業家を育成しています。

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